研究課題
芽球形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)は、自然免疫に重要なplasmacytoid dendritic cells (pDC)に類似した表現形・遺伝子発現様式を持つ急性骨髄性白血病の一亜形である。従来の抗がん剤治療には抵抗性で生命予後は不良であり、その病態は未だ明らかでない。申請者は、BPDCNに特異的に認める染色体転座t(6;8)によって、強力ながん遺伝子であるc-MYCとpDC分化に重要なRUNX2のエンハンサー領域が相互転座していることを見出した。本研究では、染色体転座によって交換・活性化されたがん特異的エンハンサーによるc-MYCとRUNX2活性化を介したBPDCN発症機構を解明する。RUNX2とc-MYCがBPDCN幹細胞の発生に十分であるか新規マウスモデルを確立することで検証する。現在まで、BPDCN生体モデルは一切報告されておらず、成功すれば、世界で初めてのBPDCNマウスモデルとなる。始めに、BPDCN患者にTET2およびp53変異が高頻度にある知見から、Tet2flox/flox;Trp53flox/flox;CreERT2 DKOマウスを交配した。患者でのがん発症過程を模擬するために、始めにタモキシフェンによってTet2とp53を欠損させた後に、造血幹細胞を採取してRUNX2とc-MYCをレトロウィルスベクターによって導入した。導入後の幹細胞をin vitroでpDCへの分化誘導をかけた後に、致死量放射線照射した野生型レシピエントマウスに移植したところ、BPDCN様の白血病細胞が発生した。さらに、どの前駆細胞がBPDCNの前駆細胞となっているかを調べるために、pDCの前駆細胞であるcommon dendritic cell progenitor 細胞についても同様の方法にて移植したところ同様の症状を発症したことから、pDC前駆細胞がBPDCN発症の前駆細胞であることが示唆された。昨年度の結果と合わせて、研究成果を国際学術誌に投稿した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究は当初の予定より早く進行している。すでに研究成果を国際的に評価の高い学術誌であるNature Communicationsに掲載している。
樹立したマウスモデルなどを用いて、今後は治療標的の探索をさらに進めていく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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