研究課題/領域番号 |
18K16097
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
村田 祥吾 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80646034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | PIGT-PNH / インフラマソーム / 蛋白欠損GPI |
研究実績の概要 |
PIGT-PNHは20番染色体上のPIGT遺伝子の変異により発症する。X染色体上のPIGA以外の遺伝子変異に起因することが確認された初のPNHであり、自己炎症症状を随伴する特徴がある。PIGT-PNHは障害されるGPI(glycosylphosphatidylinositol)生合成ステップの違いにより、PIGA変異によるPNH(PIGA-PNH)では見られない異常なGPI生合成中間体(蛋白欠損GPI)が細胞膜表面に蓄積する。本研究は、PIGT-PNHに特異的な自己炎症症状が蛋白欠損GPIの蓄積によるインフラマソーム活性化に起因すると着想し、患者検体を用いたインフラマソーム活性化実験により詳細な機序の解明を目的としている。 平成30年度はPIGT-PNH患者、PIGA-PNH患者、健常人の末梢血単核球を用いたインフラマソーム活性化実験により、PIGT-PNH患者では著明にIL-1βが上昇することをELISA法ならびにWestern blot法により確認した。さらに血管内溶血を伴う未治療のPIGA-PNH患者3名の血清を用いてIL-1β、IL-6、IL-18、血清アミロイドAを測定し、PIGT-PNH患者との比較も行い、いずれもPIGT-PNH患者で高値であることを確認した。しかし、現在までに新たなPIGT-PNH患者の集積は進んでおらず、複数のPIGT-PNH患者血球を用いたインフラマソーム活性化の個体差の評価、具体的にはフローサイトメトリーによる蛋白欠損GPIの割合とIL-1β発現量の相関性の評価は実行できていない。よって、本研究は概ね順調に進展していると判断する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者血球を用いたインフラマソーム活性化の評価方法は確立できており、この方法によりPIGT-PNH患者で特異的にIL-1βの発現が亢進することを確認した。今後、Pro-IL-1β、NLRP3のprimerを用いたqPCRにより、蛋白欠損GPIがインフラマソーム活性化の1次シグナル、2次シグナルのいずれに強く関与しているかを確認できると考える。しかし、対象となるPIGT-PNH患者の集積が進んでおらず、PIGT-PNH患者におけるインフラマソーム活性化には、蛋白欠損GPIが発現量依存性に関与していることは確認することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はPIGT-PNH患者の症例集積を継続し、インフラマソーム活性化の個体差の評価ならびに蛋白欠損GPI発現量との関連性を確認したい。さらに、PIGT-PNH患者の単核球から蛋白欠損GPIを切断し、同一患者間で蛋白欠損GPIの有無によるインフラマソームの活性化を評価したい。また、ヒト単球細胞株を用いて、蛋白欠損GPIによる補体活性化を介したインフラマソーム活性化機序の解明も試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬、器具、培養液などの消耗物品が充足しており、当初予定していた物品の購入を行う必要がなかったため、次年度使用額が生じた。 今年度は消耗物品、研究打ち合わせや国内外出張のための旅費、成果発表(論文投稿)に関連する諸経費などで直接経費1,300,000円を予定している。研究室の維持管理や事務経費などの間接経費は390,000円を使用する。
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