研究課題
がんの分化誘導療法は、従来の細胞増殖を標的とした抗がん剤治療に比べて、正常細胞への毒性が低いことが期待できることから、副作用の大幅な低減が期待 される。しかし、臨床現場で実用化されているがんの分化誘導療法は、急性前骨髄球性白血病(Acute promyelocytic leukemia: APL)に対するレチノイン酸誘導体(All-trans retinoic acid: ATRA)に限られており、その作用機序の解明に基づき、多様ながんに対する分化誘導療法の開発が望まれている。本研究では、APL細胞に対するATRAの作用機序、特にヒストン修飾因子による 遺伝子発現制御とそれに続く好中球細胞への分化誘導に着目し、その分子基盤を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに、APL細胞の好中球分化においてATRAによる発現制御を受ける下流遺伝子を同定するために、RNAシークエンス解析により、ATRAにより転写が誘導あるいは抑制される遺伝子を複数同定し、定量PCR法を用いて、これらの遺伝子の発現 が、ATRAによって実際に誘導あるいは抑制されることを明らかにした。本年度は、ATRAによる好中球分化誘導を引き起こす転写カスケードを制御していると考えられるヒストンアセチル基転移酵素のうち、ATRAによる発現亢進が見出されたNuclear Receptor Coactivator 3(NCOA3)に着目し、ATRAによるAPL細胞の好中球分化におけるNCOA3の関与について解析を行った。
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