研究課題/領域番号 |
18K16101
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
中川 亮 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (20808878)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | EZH1/2 / 骨髄腫幹細胞 / Side population / WNT/β-cateninシグナル / PRC2 |
研究実績の概要 |
入手した9つの骨髄腫細胞株のうち、8つの細胞株ではEZH1/2二重阻害剤に対して高い感受性を示した。これら何れの細胞株においても、幹細胞活性の高いSP分画の割合が、EZH1/2二重阻害剤投与により有意に低下することを確認した。また、限界希釈細胞移植法により幹細胞数を評価したところ、EZH1/2を二重阻害した細胞では腫瘍の生着が非投与群に比べ、著しく低下した。これにより、EZH1/2は再構築能を含めた骨髄腫幹細胞の維持に重要であり、EZH1/2二重阻害剤が幹細胞を標的とした治療として妥当であることが強く示唆された。また、阻害剤抵抗性である細胞株については、耐性の原因遺伝子検索のためにRNAシークエンスで解析中である。 EZH1/2のダイレクトターゲットであるWNT/β-cateninシグナルは、MM.1SおよびRPMI8226細胞株において亢進することを昨年度に明らかにしたが、EZH1/2二重阻害剤への感受性を示した全ての細胞株において、その発現が有意に亢進していることを確認した。また、クロマチン免疫沈降においても、ヒストンH3K27トリメチル化が阻害剤投与により著明に脱メチル化されることを確認した。さらに、PDXモデルにおいてもEZH1/2二重阻害によりWNT/β-cateninシグナルは細胞株での変化と同様に亢進していた。これらの結果から、骨髄腫においてWNT/β-cateninシグナルはPRC2のダイレクトターゲットであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EZH1/2二重阻害剤は殆どの骨髄腫細胞株に高い感受性を示し、さらに幹細胞を標的とした治療として妥当であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄腫細胞株の異所移植、同所移植モデルを作成し、それぞれEZH1/2二重阻害剤の効果を検討する。また、in vitroと同様にin vivoにおいてもEZH1/2を二重阻害することにより、幹細胞分画が減少するか否かをフローサイトメトリーで確認する。また、幹細胞分画におけるWNT関連遺伝子の発現変化を検討し、幹細胞分画特異的に起きている現象か否かを検討する。現在、PDXモデルの樹立に成功したのは1例のみである。その理由としては、病院側から得られるサンプル数が少ない点、移植生着に数ヶ月単位で時間がかかるため、悪性度の高い腫瘍ではないと生着できない点が挙げられる。臨床科と協力して、さらなる症例数の増加を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の端数であり、次年度に実験用物品費として使用予定である。
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