骨髄腫細胞株の異所移植、同所移植モデルを作製し、EZH1/2二重阻害剤を投与したところ、CD38陽性細胞が消失し、非常に高い抗腫瘍効果を示した。また、in vitroと同様にin vivoにおいても、阻害剤投与により幹細胞分画の細胞が有意に減少することをフローサイトメトリーで確認した。マウスへの投与において、有害な副作用は認めなかった。 さらに、WNT関連遺伝子の発現上昇は、幹細胞分画と非幹細胞分画いずれにおいてもみられる現象であることをRT-PCRで確認し、幹細胞分画の減少にWNT関連遺伝子が寄与していることを明らかにした。 本研究では、細胞株およびマウスモデルを用いた検討で、EZH1/2二重阻害剤が骨髄腫幹細胞を標的とした治療として妥当であることを明らかとした。また、この阻害剤に対して、骨髄腫細胞株およびPDXモデルは非常に高い感受性を示した。作用メカニズムについては、幹細胞性維持に重要なWNT/β-cateninシグナルに着目し、これらの遺伝子がEZH1/2のダイレクトターゲットであることをクロマチン免疫沈降にて明らかとした。さらに、このWNT関連遺伝子の発現上昇が自己複製能の低下、細胞増殖抑制に繋がっていることを過剰発現およびノックダウンの実験で突き止めた。PDXの樹立に関しては、臨床科と協力して樹立を進めたが、生着率が低く1例のみの樹立であった。その1例はEZH1/2二重阻害剤への感受性が高く、WNT関連遺伝子の発現上昇も認めた。 本研究を通じて、EZH1/2の多発性骨髄腫における機能を解明した。また、開発中の阻害剤は、多発性骨髄腫に対して非常に高い効果を示しており、今後は企業治験や医師主導治験を通じた臨床応用が期待される。
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