研究実績の概要 |
EVI1遺伝子とMPL遺伝子の異常は共に、血小板異常を伴う造血不全および骨髄系腫瘍を引き起こす。転写因子であるEVI1がMPL遺伝子の発現を制御しており、この破綻が疾患の原因となるという仮説を検証することが本研究の目的である。 この目的のために、まずEVI1過剰発現により起こる白血病の病態・発症機構について検討を行い、以下の知見を得た。3q21と3q26との間の逆位によるEVI1遺伝子高発現のみを再現した3q21q26マウスでは、白血病発症前に赤芽球・巨核球系への分化バイアスを有する多能性前駆細胞(MPP)であるMPP2が増加しており、巨核球・血小板数の増加も認められた。さらに、EVI1高発現に加えて、3q21と3q26との間の逆位や転座によりおこるGATA2遺伝子のハプロ不全も再現した3q21q26::Gata2+/-マウスでは、3q21q26マウスと比較してMPP2が増加し、血小板数増多を伴う白血病を発症する割合が高くなることを明らかにした。すなわち、EVI1過剰発現による白血病での血小板数増加の病態においてはGATA2遺伝子のハプロ不全も重要な役割を果たしていることがわかった。 またEVI1、MPLと協調して巨核球・血小板造血に関わる因子を探す目的で、遺伝性血小板減少症の未診断症例の原因遺伝子探索を行ったところ、新規の血小板減少症の候補遺伝子を同定した。この新規の原因遺伝子はEVI1の標的遺伝子の可能性が報告されており、EVI1, GATA2, MPLの異常による造血不全・骨髄系腫瘍の発症メカニズム解明につながる新たな知見を得ることができた。
|