本研究は、iPS細胞に外来性のT細胞受容体(TCR)遺伝子をゲノム編集技術による部位特異的なノックインおよび組み替え技術を用いて挿入したiPS細胞を作製し、分化誘導培養を用いて再生させた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の抗腫瘍効果を検証することを目標としている。ノックインiPS細胞の作製手順は、1) 京都大学CiRAより提供される非T細胞由来のiPS細胞のTCR遺伝子座にCrisprCas9システムを用いて「カセットデッキ」構造を挿入する(カセットiPS細胞)、2) 外来TCR遺伝子は、このカセットiPS細胞上でCreシステムを用いて入れ替える形式で導入する、という2段階で行う。 2018年度の研究では2)のiPS 細胞上でのTCRの組み替えが難しく代替策で研究を進行させていたが、2019年度はカセットベクターを再設計し1)2)をやり直すことにより解決することができた。また、WT1とNY-ESO1の2種類のがん抗原に特異的なTCRをそれぞれ組み替えたノックインiPS細胞を作製し、それぞれを分化誘導することでそれぞれ良質な再生CTLを得ることに成功し、がん細胞に対し特異的に殺傷能力を示すことを確認することができた。
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