本研究は免疫寛容において重要なIgD陽性Bリンパ球の機能調整、遺伝子発現調整においてSATB1の役割を分子レベルで明らかにすることを目的とする。具体的には下記の実験を行った。 (1)Bリンパ球特異的なMb1-CreマウスとSATB1 flox/floxマウスを交配させ、lox-CreシステムによってBリンパ球特異的SATB1ノックアウトマウス(KOマウス)を作製した。フローサイトメトリーの解析結果によって、脾臓B細胞においてIgD陽性IgM陰性B細胞分画が増加することが示された。(2)KOマウスにchicken gamma globulinの投与による免疫感作を行ったところ、KOマウスではコントロールマウスに比べて有意に、抗原特異的なGerminal B cellの誘導が低下することが示された。(3)In vitroの実験では、抗IgM抗体の刺激に対し、KOマウスの脾臓Naive B 細胞はMHCII、 CD86の発現が障害されることがわかった。(4)PCRおよびRNA-seqによってKOマウスの脾臓naive B細胞の遺伝子発現を解析すると、MHC II、CD86の発現に必要なINFγの発現低下を認めていた。 IgD陽性naive B細胞は免疫寛容状態であるが、特定の抗原に出会うと、免疫寛容状態から再度増殖、抗体産生を行うことがわかっている。SATB1はINFγの発現調整を介してIgD陽性naive B 細胞の抗原提示に関わるMHCIIやCD86などの発現を促進し、免疫寛容状態を解除するために重要な役割があることが示唆された。 上記の結果は、2020年日本血液学会で発表した。また、現在、論文作成中である
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