研究課題
多発性骨髄腫(MM)は、転写因子IRF4が統治する腫瘍細胞の生存増殖機構を有し、セリンスレオニンキナーゼPIM2が高発現する形質細胞性腫瘍である。MM細胞におけるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)アイソフォームの個々の治療標的としての意義は不明な点が多い。昨年度までの検討で、MM細胞においてHDAC1はIRF4やPIM2の発現調節に関わることを明らかにしてきた。今年度の研究では、HDAC1によるその発現調節機構の解明とHDAC阻害薬とPIM阻害薬の併用療法の開発を行った。MM細胞においてHDAC1阻害はIRF4やPIM2の発現低下に繋がることから、ChIPシーケンスを用いて、HDAC1の遺伝子プロモーター領域への修飾を解析し、HDAC1はIRF4やPIM2の転写開始点領域のヒストン脱アセチル化修飾を行っていることを確認した。さらに、MM細胞株をクラスI HDAC阻害薬MS-275で処理すると、HDAC1はIRF4転写開始点領域でのヒストンへの結合が阻害されると同時に、ヒストンアセチル化が増加することをChIP-qPCR 法で確認した。HDAC1阻害におけるIRF4発現低下の意義を明らかにするために、IRF4過剰発現MM細胞株でHDAC1発現抑制を行った。HDAC1発現抑制はIRF4過剰発現細胞において細胞増殖抑制効果を認めず、HDAC1の治療標的意義はIRF4の発現抑制であることが明らかとなった。前年度までにMS-275と種々のPIM阻害薬の併用効果をin vitroで検討していた。PIM阻害薬の中でもSMI-16aはPIM2発現抑制効果を発揮することを我々は報告しており、本研究ではSMI-16aとMS-275による併用効果を骨髄腫マウスモデルで検討し、腫瘍抑制に関する併用効果が確認できた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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