研究課題/領域番号 |
18K16119
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原田 結 九州大学, 薬学研究院, 助教 (00608507)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | NK細胞 / Licensing |
研究実績の概要 |
KIR分子群はNK細胞が持ち、Licensingにも深く関わることが示唆される一連のIgG様ドメインを持つ細胞膜結合型タンパクで、 活性/抑制の種々のシグナルを伝達するが、そのリガンドであるHLAを極めて高精度で認識することが分かっている。しかも個々のNK細胞によってその発現パターンは異なり、例えば6つの分子に着目すると2^64通りのNK細胞が存在することが分かる。 我々が開発した高活性NK細胞の増幅培養技術を用い、その活性化の過程でのKIRの発現の変化を詳細に解析した。その結果、特定のKIRの発現を除いて多くのKIRの発現が活性化と共に消失していくことが明らかとなった。即ち、この高活性NK細胞はHLAから受け取るnegative signalが極めて弱いことが示唆されるものの、極めて高い精度で腫瘍細胞と正常細胞とを識別可能であり、35株のCell lineに対する傷害活性を確認した一方で、PBMCやHUVEC等の正常細胞には一切傷害活性を示さなかった。
NK細胞が持つ活性化型レセプターのうち、会合分子が持つITAM(細胞内で活性化シグナルを伝達するモチーフ)の数が特に多いのはIgGのFcを認識するCD16を除けばNKp30とNKp46が挙げられる。そこで高活性NK細胞が正常細胞と腫瘍細胞とを高精度に見分けられる理由が、これら活性化型レセプターのリガンド発現パターンにあるという仮説のもと、高活性NK細胞が腫瘍を認識する際にNKp30/p46にどれだけ依存しているかを確認した。その結果は予想に反し、障害活性はいずれの分子のリガンドの多寡とも相関せず、加えてNKG2Dにおいても同様であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前提としていた高活性NK細胞AdoptCellの培養系は安定してワークし、予定していたKIR発現や傷害活性の確認を順調に進めることが出来た。当初計画に加えてNKG2Dについても検討を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
NK細胞が持つ抑制型レセプターは、活性化型レセプター以上に未解明と言える。これまでの研究結果から、Licensingは主に接 着系の細胞(恐らく単球)を介して行われている可能性が高い。そこで、HLAのタイピング結果と照らしながら培養行程中のNK のKIR発現パターンをモニタリングすると共に、培養中に接着系の細胞とNKとをHLA/KIRタイピング結果の異なる細胞とスワッピ ングし、Licensingの状態変化を確認する。ここで、Licensing状態を「傷害活性とKIRの発現量変化」として定義し、今後の評価を進める。 これらの研究結果は臨床応用を目指して並行して行われる研究開発へのフィードバックをしつつ進められる予定である。
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