NK細胞の抗腫瘍活性の測定に標準的に用いられるK562の他、種々の組織に由来する腫瘍細胞に対する傷害活性の測定を行った結果、HLA nullかつNKG2D ligand陰性であるため一般にNK-resistantとして知られるRajiを含め、腫瘍由来組織横断的に、K562/IMR32/HCT116/SKOV3/MCF7/Hut78などに対してE:T=1:1、2時間の共培養による傷害活性はPrimary NK細胞のそれを大きく上回ることが確認された。予想に反し、接着系の細胞に対してはSpheroidを形成した際により高い傷害活性を示すことが明らかになり、臨床応用の際には固形腫瘍に高い奏功が期待される結果となった。また急性単球性白血病細胞であるTHP-1はSpheroidを形成しないが、驚くべきことに液性因子X(炎症性サイトカインの一つ)を添加するだけでその感受性が大幅に向上することが明らかになった。 またGAIA-102をエフェクターとした場合、MogamulizumabはCCR4陽性であるHut78に対してADCC活性を示した一方、CCR4陽性の正常細胞(末梢血中CD4陽性T細胞の一部)に対する傷害活性は観察されなかった。つまり、多くの抗体医薬品が抱える有害事象の一つ、”On-target Off-tumor効果” の原因細胞がNK細胞(GAIA-102のような体外で活性化培養を経た細胞であっても)ではないことが確かめられた。 本研究の成果はNK細胞を再生医療等製品として開発する際に貴重な情報を与えると共に、NK細胞による腫瘍細胞識別機構解明の糸口を発見した有意義なものであった。
|