研究課題/領域番号 |
18K16122
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
勝屋 弘雄 熊本大学, エイズ学研究センター, 特任助教 (80632041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HTLV-1 / 成人T細胞白血病・リンパ腫 / キメラトランスクリプト / 次世代シークエンシング |
研究実績の概要 |
HTLV-1感染クローンは特有のウイルス組み込み部位を有している。プロウイルス遺伝子と組み込まれた部位の周囲遺伝子とで形成されるキメラトランスクリプトは、それぞれの感染クローンに特有である。このキメラトランスクリプトと成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)発症機序との関連を明らかにするために研究を行っている。 プロウイルス濃縮法を併用したRNA-seqを用いて、ウイルスとヒト遺伝子のキメラトランスクリプトが30例のATL患者のうち19例で検出された。これらのキメラトランスクリプト特異的なプライマーを設計し、デジタルPCRを用いて発現量を定量した。19例中5例は、ウイルスのトランスクリプトであるHBZとほぼ同等レベルのキメラトランスクリプトを発現していた。キメラトランスクリプトの機能解析を行うために、全長の塩基配列を同定する必要がある。未知の長さのキメラトランスクリプトの塩基配列を知るために、発現量の高かった検体7例でナノポアシークエンシングを行った。この解析では、ウイルスのプラス鎖とマイナス鎖のいずれにおいても、多彩ななキメラトランスクリプトが存在していることが明らかになった。その中でもウイルスプラス鎖のエクソン1から始まり、その下流の遺伝子と融合したキメラトランスクリプトの発現が多く観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、HTLV-1とホストのキメラトランスクリプトの存在を確認し、その定量を行った。新たなシークエンシングシステムであるナノポアシークエンサーを導入することに成功し、ウイルス特異的プローブを用いた濃縮法を併用して、キメラトランスクリプトの全長配列を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
HTLV-1感染のJurkat細胞を長期間培養した後に、複数の感染クローンがクローン性増殖を示した。これらの感染クローンでもウイルスとホストのキメラトランスクリプトが確認された。これらの感染細胞をクローニングし、キメラトランスクリプトの機能解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
キメラトランスクリプトの存在の確認と定量を臨床検体を用いて行った。ナノポアシークエンスを用いた全長のトランスクリプトの解析が7例までとなったため、物品費が予定額よりも少なくなった。 今後さらに臨床検体を用いてナノポアシークエンスを行う。またHTLV-1を感染させた細胞株においても同法を用いてキメラトランスクリプトの解析を実施する。また、これまでの成果を学術論文として報告するための諸経費(論文投稿料、掲載料など)として使用する。
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