研究実績の概要 |
健常人由来末梢血単核球 (PBMCs) と多発性骨髄腫(MM)由来細胞株とをフィルターを介した間接的条件下での共培養し、培養後のPBMCsを解析したところ、一部のMM細胞株で骨髄由来抑制細胞(M-MDSC)が誘導されることを見出した。この誘導された分画を別のPBMCsとさらに共培養すると、制御性T細胞(regulatory T cell, Treg)の有意な増加を認めると共に、MDSC誘導時に必要とされるIL-8やIDOの高発現が認められた。 次にMDSC誘導に関与する液性因子をサイトカインアレイを用いてスクリーニングした結果、MDSC誘導能を有するMM細胞株のみにおいて、CCL5およびMIP-1αの濃度が有意に高いことが判明した。一方でMIFは全てのMM細胞株での分泌が確認された。MM細胞株とPBMCsとの共培養系にCCL5中和抗体を添加したところ、MDSC誘導は有意に抑制され、MIF阻害剤も添加するとMDSC誘導をほぼ抑えることが可能であった。以上からMMにおいては腫瘍細胞から分泌されるCCL5とMIFが協調的に作用することでM-MDSCを誘導することが強く示唆された。 さらに、既存の抗MM薬のMDSC誘導能に対する効果の検討を行った。結果、免疫調整薬(IMiDs、LENまたはPOM)投与下で、M-MDSC誘導を選択的に低下させる効果が得られ、その作用はPOMで特に強力であった。IMiDs投与後のMM由来細胞株のCCL5、MIFの発現は有意に低下しており、さらに、末梢血単核球についてもCCL5受容体であるCCR5の細胞表面発現が低下し、MDSC誘導に抑制的に働くIRF8の発現レベルが上昇していた。以上から、IMiDsは骨髄腫細胞と末梢血単核球の両者に作用することでM-MDSC誘導を強く抑制する薬理学的効果を有することが明らかになった。
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