研究課題
骨髄増殖性腫瘍(Myeloproliferative Neoplasm; MPN)は、骨髄中の造血幹細胞あるいは血球前駆細胞にドライバー変異が生じ、細胞の腫瘍化によって発症する稀な造血器腫瘍である。現在、MPN治療に用いられるJAK2阻害薬をはじめとした薬物は、血球数のコントロールや全身症状を改善するが、当該疾患を根治できない。MPNの根本的な治療法である骨髄移植は、治療関連死のリスクや移植不適応症例が多いなどの理由から、症例は極めて少ない。そのため、MPN発症メカニズムの理解に基づく新規治療法の開発が急務である。申請者らは、2013年に新たに発見されたドライバー変異遺伝子CALRから作られた変異型タンパク質が、サイトカイン受容体TPORに結合し、受容体を恒常的に活性化することで、MPNを引き起こすことを明らかにした。しかし、これまで分子シャペロンCALRに受容体を活性化する機能は知られておらず、変異型CALRによる受容体活性化の詳細なメカニズムは明らかでない。そこで本研究では、生きた細胞中において、変異型CALRが細胞内のどこでサイトカイン受容体を活性化するか解析するイメージングシステムの確立を目指した。これまでに、変異型CALRと黄色蛍光タンパク質Venusを融合させたキメラタンパク質を、レトロウイルスベクターを用いてヒト巨核球系細胞株UT-7/TPOに発現させ、変異型CALRの機能を示すか検証した。変異型CALRの局在および細胞内の蓄積量が、Venusタグを用いていない場合と同等であった。さらに、TPORを発現する細胞においてサイトカイン非依存的な増殖を示した。この増殖は、TPORを発現しない細胞株では見られなかった。以上の結果より、変異型分子シャペロンによるサイトカイン受容体の恒常的な活性化を再現する新たな解析システムが確立できた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Leukemia
巻: 34 ページ: 499-509
10.1038/s41375-019-0564-z
巻: 33 ページ: 122-131
10.1038/s41375-018-0181-2