研究課題/領域番号 |
18K16128
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
平林 真介 北海道大学, 大学病院, 助教 (50769635)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MDS / Cancer predisposition |
研究実績の概要 |
本研究は、本邦の小児から若年成人の骨髄異形成症候群において疾患の成り立ちに重要である先天性素因の同定と臨床像の解明を目的とする。平成30年度は研究対象の基盤を拡張するため、多施設で症例登録可能な研究計画書を倫理審査に諮り承認を得て、小児MDS治療研究会や学会誌での同課題について討議を重ねた。令和元年度は、代表研究者が聖路加国際大学から北海道大学に異動したため、研究遂行の変更と基盤の再整備が必要となった。 令和2年度は、これまで交流を行っていた国際共同研究者と論文発表を行うことができた。GATA2異常は骨髄異形成症候群の先天性素因として重要であるが、意義が不明であった同義置換変異が、RNAの機能低下に影響を与え病的意義があることを明らかにした(Leukemia. 2020 Oct;34(10):2673-2687. )。 乳幼児の遺伝性骨髄不全症候群の鑑別疾患としてPearson症候群がある。希少な疾患であり、骨髄不全は自然回復することが知られていたが、骨髄異形成症候群に進行する例を経験し、その病態を解析し、monosomy 7やRUNX1変異が蓄積することを明らかにした(Pediatr Blood Cancer. 2021 Feb;68(2):e28799.)。 学会発表としては、日本小児血液・がん学会の2020年学術集会のシンポジウムと地域教育セミナーにおいて、骨髄異形成症候群の教育、啓蒙活動をそれぞれ行った。また日本臨床雑誌に遺伝性造血器腫瘍の総説を執筆し、広く内科領域に向けて啓蒙活動を行った。これまで得られた知見を引き続き整理する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は症例集積の拡大を目指し、多施設共同研究とするため新たな倫理審査の申請を行った。IRBの承認までの時間を要し全体的に研究の遂行は遅れているが、平成30年12月に承認を得ることができた。しかし、平成31年度は、代表研究者が聖路加国際大学から北海道大学に異動したため、研究遂行の変更が必要となり、研究計画書の再申請や研究環境の再構築を進めた。 令和2年度においては一定の研究業績や学会活動の成果を上げたが、新型コロナウイルスの影響があり、海外、国内研究者との交流や検討を行うことができず、十分な活動を行うことは不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行は遅れているが、北海道大学の基盤は整備され、これまでの実績もあることから、今後研究を進めて行くとは可能である。大学内だけでなく、学会や論文雑誌において、本研究の目的である、本邦の小児から若年成人の骨髄異形成症候群において疾患の成り立ちに重要である先天性素因の同定と臨床像の解明について積極的に発信を行っていく。今年度も引き続き、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「特発性造血障害に関する調査研究」(三谷班)との連携を進め、具体的な解析データを検討していく予定であり、また症例集積に伴いデータベースの作成を進める。遺伝性要因による疾患は創始者効果や人種差の影響が強いため、日本人における検討が必須となる。同時に海外学会参加または海外研究者の招聘を行って交流や共同研究をはかり、人種差の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は、代表研究者が聖路加国際大学から北海道大学に異動したため、研究遂行の変更が必要となり、研究計画書の再申請や研究環境の再構築を進めた。令和2年度は一定の成果を収めたが、新型コロナウイルスの影響があり、海外、国内研究者との交流や検討を行うことができず、十分な活動を行うことは不可能であった。 令和3年度において、未着手の症例における遺伝子解析費用として使用する。可能であれば海外研究者の招聘を行って、先天性素因の人種差などについて検討を進める費用を考えている。
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