好塩基球は、アレルギー発症に関わる免疫細胞の活性化や分化誘導に関与することが報告され、アレルギー疾患治療の標的細胞として注目されている。これまでに研究代表者は、細胞外ヌクレオチド受容体のP2Y6受容体が、好塩基球のIgE依存的活性化の調節に関与していることを明らかにしている。本研究課題で、昨年度、好塩基球のP2Y6受容体は、UDP刺激により細胞内cAMPとIP1量を増加させることを明らかにした。また、cAMPおよびIP1の産生抑制は、IgE依存的活性化を減弱させることも明らかにした。 本年度は、P2Y6受容体の特異的アゴニストであるUDPを好塩基球が産生できるか確認した。ヒト末梢血好塩基球における細胞外ヌクレオチド加水分解酵素(ENTPD)の発現を確認したところ、ENTPD2およびENTPD3が発現していることが判明した。単離した好塩基球に添加されたUTPが、UDPおよびUMPに加水分解されることをHPLC法で確認することが出来た。さらに、ENTPD阻害剤を加え培養した好塩基球は、IgE依存的活性化が減弱することが明らかになった。研究代表者は先行研究で、好塩基球がUTPを分泌していることを明らかにしている。以上のことから好塩基球は、分泌したUTPをUDPに加水分解し、恒常的にP2Y6受容体を刺激していることが示唆された。また、細胞外ヌクレオチド加水分解酵素の阻害は、好塩基球の活性化を低減させアレルギー反応を抑制する可能性が示された。今後は、P2Y6受容体による好塩基球の機能調節が、生体内でも誘導されるか確認し、アレルギー疾患治療のターゲットとしてP2Y6受容体が有用であるか検討していく予定である。
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