申請者らは、がん細胞特異的に発現するとされてきたピルビン酸キナーゼM2(PKM2)が、活性化したマクロファージにおいても発現し、向炎症性を制御する事を報告した。その後、T細胞においてもPKM2の活性化がみられることが明らかになってきた。中でも、PKM2の発現とそのオリゴマーの変化が、直接的に免疫細胞の向炎症性を制御する事が徐々に明らかになってきている。このがん細胞に類似した細胞内代謝を標的に炎症制御を行うことで、多くの炎症性疾患において、正常細胞に対する影響を最小限とする画期的な治療法となることが期待される。本研究では、PKM2の低分子活性化剤を用いてPKM2オリゴマーの免疫細胞における機能をin vitroで検討するとともに、炎症性疾患動物モデルを用いてPKM2が炎症性疾患における新規標的分子となることをin vivoで検証した。これまで、ヒト単球由来マクロファージのM1あるいはM2マクロファージへの分化、CD4陽性あるいはCD8陽性T細胞の分化において、PKM2低分子活性化剤によりPKM2の発現を修飾しエフェクター機能の検討を行った。また、SLEモデルマウス(MRL/lprマウス)におけるPKM2の解析を行い、in vivoにおけるPKM2低分子活性薬の効果判定を行った。更に膠原病患者検体を用いて、PKM2低分子活性薬による向炎症性への修飾効果を評価した。これらの実験を通して、PKM2オリゴマーが、M1マクロファージの活性化を制御する事、またT細胞分化にも関与し、モデルマウスではlpr細胞を制御する事、またヒト検体ではT細胞の特定のサブタイプにおける分化に関わっており、膠原病における免疫フェノタイプに関連する可能性があることが明らかになった。
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