【目的】シェーグレン症候群 (SS)様唾液腺炎を自然発症するT細胞特異的RORγtトランスジェニックマウス (RORγtTg)におけるRORγt antagonist (A213)の治療効果と、その作用メカニズムにおけるNr4a2の意義を明らかにする。【方法】6週齢の雌RORγtTgに、A213あるいはPBSを3日に1回、2週間経口投与し、①唾液量、②唾液腺の病理学的所見、末梢リンパ組織のCD4+T細胞における、③CD25、Foxp3発現、④Nr4a2発現、⑤胸腺におけるT細胞分画を2群間で比較した。【結果】①投与前に対する投与後の唾液量の比は、A213投与群で有意に増加した。②投与後の唾液腺のfocus scoreは、A213投与群で有意に低値であった。③頸部リンパ節 (CLN)のCD4+T細胞におけるCD25+細胞の割合はA213投与群で有意に低下したが、脾臓では2群間に有意差はなかった。また、CLNのCD4+CD25+Foxp3+細胞、CD4+CD25+Foxp3-細胞の割合は、A213投与群で有意に減少したが、脾臓では同等であった。④脾臓CD4+T細胞におけるNr4a2発現は2群間に有意差はなかった。⑤胸腺CD4+CD8+ (DP)細胞はA213投与群で減少した。【結論】A213は、RORγtTgのCLNのCD4+CD25+細胞を減少させ、SS様唾液腺炎を抑制したが、末梢リンパ組織におけるNr4a2への作用とその意義は明らかにならなかった。一方、胸腺ではA213投与によりDP細胞のapoptosisが促進されたことから、中枢性免疫寛容への作用が唾液腺炎の改善に寄与した可能性が示唆された。Nr4a2は胸腺細胞のapoptosisを介した中枢性免疫寛容の獲得への関与が示されていることを踏まえ、RORγtTgを用い胸腺におけるNr4a2の病因的役割を解析予定である。
|