研究実績の概要 |
本研究の目的は乳児期発症のアトピー性皮膚炎に関わる母乳中のmiRNAを解析することにより乳児アトピー性皮膚炎の発症機序を解明することにある。 本年度は当科で行っているコホート研究の背景データ及び臨床的データの解析を行った。本コホート研究では、269人のアレルギーハイリスク(母親、父親、きょうだいのいずれかにアレルギー疾患歴あり)の正期産児を出生時から5歳まで追跡調査している。母親のアレルギー歴は86.1%、母親のTotal IgE値は183.3±539.7、母親の喫煙歴は2.6%、 平均在胎週数38.9±1.4週、男児49.4%、帝王切開29.6%、年長きょうだいがいるのは42.3%だった。1歳時点でのアウトカムとして特異的IgE陽性割合は卵白33.2%、牛乳13.1%、コナヒョウヒダニ6.7%だった。1歳時点でのアトピー性皮膚炎は15.4%、気管支喘息は12.0%だった。また、同コホート研究での臍帯血のmicroRNAを解析した。この中で高発現していたhsa-miR-1,133b,204-5p,95,10a-5p,208a,885-5p,182-5p,200a-3p,605を母乳中のmiRNA発現との関連を解析していく予定である。母乳中のmiRNAは現在抽出方法をいくつか検討しており確立しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
【アトピー性皮膚炎と関連のある母乳中miRNAの同定】出生コホートですでにサンプリングしてある母乳を用いてmiRNAを抽出する。Real-time PCRを用いてmiRNA発現の解析をしてアトピー性皮膚炎と関連のあるmiRNAを同定する。 【同定されたmiRNAが児に移行しているかの解析】本コホート研究における1歳時の血清中miRNAはExiqon社のmiRCURY RNA Isolation-Biofluids kitを用いて抽出してあり、保存されている。このmiRNAを用いてreal-time PCRを行い、母乳中のmiRNAプロファイルと児の血清中miRNAプロファイルを検討する。 【同定されたmiRNAの機能解析】Target scan, PicTar, microRNA.org等のmiRNA研究において汎用されているデータベースを用いて同定されたmiRNAの標的遺伝子をin silicoで同定する。アトピー性皮膚炎発症に重要なCD4+ T細胞及びケラチノサイトを用いてmiRNAをトランスフェクションする。標的遺伝子をreal-time PCRで発現が低下するか確認する。解析された標的遺伝子により細胞機能の変化がみられるか、細胞上清を用いてサイトカインの測定をELISAを用いて検討する。
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