研究実績の概要 |
研究の目的は乳児期発症のアトピー性皮膚炎(AD)に関わる母乳中のmiRNAを解析することによりADの発症機序を解明することにある。 ハイリスク出生コホート研究(CHIBA study)において1歳時点での卵白感作に関わる因子として多変量解析を行ったところ乳児湿疹、アレルギー疾患の家族歴、男児に加えて母乳栄養(OR:2.64, 95%CI: 1.45-4.81)がリスクであることが分かった(PediatrAllergyImmunol.2020;31:315-318.)。別の独立した出生コホート研究(Katsushika study)においても同様に卵白感作のリスク因子として母乳栄養(OR:1.79,95%CI:1.13-2.84)があげられた。この結果より卵白感作には母乳栄養中の免疫物質、microRNA等が関わっている可能性があると考えられた。Katsushika studyの母乳を用いた検討で9か月時にADを発症していた児ではADを発症していない児に比べて1か月時の母乳中可溶性CD14が有意に低いことが分かった(Nutrients. 2019 Sep 5;11:2118.)。 そこで我々は保存されていたCHIBA studyの母乳を用いてmicroRNAの解析を行った。6カ月時におけるAD群、非AD群5人ずつをプールしたサンプルを用いてmiRNA Oligo chip(東レ)で網羅的解析を行った。その結果、hsa-miR-342-5p、hsa-miR-551b、hsa-miR-4520が6か月時にADを発症している児において発症していない児と比べて有意に低いことが分かった。In silico解析でhsa-miR-342-5pはVEGF、TGFb signalingに関わっており、母乳中のmiR-342-5pが児の腸管から吸収されて働いている可能性が示唆された。
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