多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)では、病態に非特異的な既存の免疫抑制治療に対し副作用や治療抵抗性を示す症例が多く、病態に基づいた新規治療薬の開発が重要である。当研究室は、自己免疫性筋炎の発症には、細胞傷害性CD8T細胞(CTL)だけでなく、筋局所の自然免疫活性化も必須であることを示しているが、PM/DM患者の筋病変に浸潤しているマクロファージ(Mψ)や筋細胞自体の自然免疫活性化への寄与の理解は十分でない。本研究では、ヒトiPS細胞(hiPSC)由来筋細胞を抗原特異的に傷害するCTLの系に対してMψを混合培養し、Mψや筋細胞自体がCTLの筋細胞傷害能に与える影響の検証からPM/DMの病態解明を目指した。 PM/DMの病態特異的な抗原は同定されていないため、日本人の約60%がヘテロで有するHLA-A*24:02の特異抗原であるWT1ペプチドと、WT1特異的再生CTLに着目した(Cancer Res 2016;76:6839)。京都大学河本先生よりWT1特異的再生CTLをいただき、HLA-A*24:02陽性の抗原提示細胞を用い、再生CTLを当研究室でも増殖・活性化させることができた。 次に、当研究室で樹立済みの4例のPM患者由来hiPSCのHLAを解析し、HLA-A*24:02陽性であった1例のhiPSCに対し筋原生転写因子MyoDを導入して、筋細胞へと分化可能なMyoD強発現MyoD-hiPSCバルクの樹立に成功した。 そして、HLA-A*24:02陽性MyoD-hiPSCバルクを筋細胞へと分化させ、活性化したWT1特異的再生CTLとWT1存在下で共培養することで、CTLによる筋細胞傷害を誘導できた。 今後、hiPSCからMψも分化させ、hiPSC由来の筋細胞-CTL- Mψの混合培養系でのCTLの筋細胞傷害能の変化から、Mψや筋細胞の自然免疫活性化への寄与を考察する。
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