本研究では、顆粒球の活性化とそれに連なる免疫疾患の病態を、免疫ガイダンス分子セマフォリンの関与を軸として解明するという目的を持って研究を行ってきた。血管炎モデルマウスの構築については、MPOノックアウトマウスを用いた既存の手法に、免疫経路や処置の改良を加え、腎血管炎が高いレベルで発症する条件を見出した。これをベースに、モノクローナル抗体を移入するモデルマウスを作成、血管炎の発症に成功した。その他、免疫難病に伴う眼血管炎の新たな画像指標の報告(Ann Rheum Dis. 2020)に携わり、臨床現場における網膜血管炎の指標としてOptical Coherence Tomography Angiography(OCTA)の有用性を見出し、血管炎の臨床経過を画像的に捉えた症例を報告した。血管炎患者臨床サンプルの取得・解析については、先行研究以降、本学で新たに取得したAAVサンプルのセマフォリン濃度測定を完遂した。先行研究の結果と同様に、血清SEMA4D値は白血球数、好中球数、尿素窒素、クレアチニン、CRPのいずれとも有意な相関は示さなかった。血清SEMA4D濃度とBVASについては、正の相関を認め、先行研究の結果に沿っていた。また、新たな発見として、血清SEMA7A濃度が血管炎患者で有意に上昇していた。血清SEMA7A濃度は、白血球数、CRP、腎機能と正の相関を認め、特に腎機能障害の程度と強い相関を認め、SEMA4D/SEMA7AがANCA関連血管炎のバイオマーカーとなり得る結果が示された。
|