研究実績の概要 |
P. copri菌は、関節リウマチ(RA)患者で増多しているだけでなく、穀物や繊維類を主食とする東南アジアやアフリカ諸国の健常者の主たる腸内細菌叢であることが知られている。このことから、RAを引き起こすP. copri菌と健常者の腸内に生息するP. copri菌が同じ菌種であっても株により関節炎の惹起能に違いがあると考えた。それを実証するため、P. copri菌を糞便から単離する実験を行い、RA患者と健常者から単離培養することに成功した。それぞれの全ゲノム解析にて、違いを明らかにした。さらに、RA患者由来と健常者由来のP. copriをそれぞれ、関節炎モデルマウスに投与したところ、RA患者由来のP. copri菌の投与で関節炎が増悪した。RA患者由来のP.copri(以下RA-P.copri)と健常者由来のP.copri(HC-P.copri)をDBA1マウスへ移入し、関節炎を誘導した後で、各臓器の免疫細胞をFACSにより評価した。その結果、膝窩リンパ節においてTh17細胞の増多を認めた。次にTh17細胞増多のメカニズムの検索を行った。骨髄由来の樹状細胞に、RA-あるいは、HC-P.copriの死菌を共培養し、ELISAでサイトカインの産生を評価したところ、RA-P.copriとの共培養でTh17関連のサイトカインであるIL-6, IL-23の増多を認めた。このことから、RA-P.copriは自然免疫の活性化を介し、Th17細胞を活性化し関節炎の増悪に関与することが示唆された。
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