①ラミニン511抗体陰性AIP例における自己抗原の同定 申請者は、ラミニン511結合タンパクであるインテグリンα6β1に、一部のAIP患者(ラミニン511自己抗体陰性例26例中5例)が自己抗体を有していることを発見した。また、興味深いことに、すべてのインテグリンα6β1自己抗体陽性例は、膵尾部の中央に病変を認め、画像所見が全例で酷似していた。更に、インテグリンα6β1自己抗体陽性5例中、3例で悪性腫瘍(胃癌と肺癌)の合併を認めた。更に、同腫瘍の免疫染色では、インテグリンα6β1の発現を認めた。また、インテグリンα6β1をマウスに免疫すると膵臓に障害を認めた。これらから悪性腫瘍が発現するインテグリンα6β1を自己抗原として、悪性腫瘍がAIPを起こしているparaneoplastic syndromeの可能性が考えられた。 ②AIP以外のIgG4関連疾患における自己抗原の同定 一部のIgG4関連腎疾患患者では、ラミニン521に対する自己抗体を認め、IgG4関連腎疾患の自己抗原の可能性が考えられた。また、ラミニンの中のラミニンβ2に抗原があることも判明した。 ③自己抗体測定によるIgG4関連疾患の診断・病型分類・治療効果判定における有用性を検討、および新たな診療体系の確立 インテグリンα6β1自己抗体は、paraneoplastic syndromeのマーカーとして、期待が持てる。更なる症例数を増やした解析を予定している。また、ラミニン521自己抗体も、IgG4関連腎疾患のマーカーとして可能性を持つが、こちらも症例数を増やして解析する必要がある。 しかし、唾液腺病変である、ミクリッツ病、AIPの残りの4割の自己抗原も今回の研究では同定できなかった。更なる自己抗原の同定を進めることによって、臨床で使用できる診療体系の構築を目指した。
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