研究課題/領域番号 |
18K16155
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
尾崎 貴士 大分大学, 医学部, 病院特任助教 (70749374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パルミトイルエタノールアミド 容体 / 脂質メディエーター / Toll様受容体9 / SLE |
研究実績の概要 |
研究代表者が所属する研究室では、SLEモデルマウスと野生型マウスの脾臓および血液中に含まれる脂質メディエーターの濃度を、計159種類の脂質メディエーター関連物質を解析対象とした液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いて解析を行った結果、SLEモデルマウスではパルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)の濃度が野生型マウスに比べて血中及び脾臓内で低値であることをこれまでに明らかにした。 そこで、SLEの病態形成機序に関わっているToll様受容体9(TLR9)刺激に対するPEAの作用を解析することとし、これまでの研究においてPEAは骨髄由来樹状細胞におけるTLR9刺激による炎症性サイトカイン(IL-6, IL-12, IL-23)の産生をmRNAレベルおよびタンパクレベルの両者で抑制することを見出した。また、同様に脾臓B細胞やマクロファージ細胞株(Raw 264.7細胞)においても、PEAはTLR9刺激によるIL-6の産生をmRNAレベル、タンパクレベルで抑制した。さらにPEAは、骨髄由来樹状細胞においてTLR9刺激による細胞表面マーカー(CD86、CD40、MHC ClassII)の発現を抑制し、同様にB細胞においてもCD86とCD40の発現をPEAは抑制することを見出した。また、本年の研究により、PEAはTLR9刺激によるマウス脾臓B細胞の増殖を抑制すること、さらにB細胞におけるTLR9刺激によるIgM抗体産生も抑制することを明らかにした。in vivo においても、TLR9刺激薬であるCpG-ODNとDガラクトサミンを用いたseptic shock modelマウスにおいて、PEAを投与することにより血中IL-6濃度の上昇が抑制されることをすでに見出しており、一連の研究結果から、SLEをはじめとするTLR9刺激よる炎症病態の制御にPEAが有用である可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究では、骨髄由来樹状細胞、脾臓B細胞、Raw 264.7細胞において、PEAはTLR9刺激によるIL-6の発現を、タンパク質レベルに加えてmRNAレベルにおいても抑制することを見出した。また、骨髄由来樹状細胞では、PEAはIL-12とIL-23のmRNA発現も抑制した。また、免疫担当細胞における細胞表面マーカーをフローサイトメトリーにて解析し、PEAは骨髄樹状細胞においてTLR9刺激によるCD86、CD40、MHC ClassIIの発現を抑制することを見出し、B細胞においてもPEAはCD86とCD40の発現を抑制することを明らかとした。ヒトSLEでは体内に存在する核酸などが免疫担当細胞のTLR9に結合し、最終的にB細胞由来の形質細胞が自己抗体を産生することが病態機序の一部とされている。本年度はB細胞におけるPEAのTLR9抑制作用をさらに追及するうえで、B細胞の増殖能や抗体産生能に対するPEAの作用を分析した。マウス脾臓由来B細胞に対してTLR9刺激をした後の細胞増殖をフローサイトメトリーにて解析した結果、PEAはTLR9刺激によるB細胞の増殖を抑制することを見出した。また、マウス脾臓由来B細胞におけるTLR9刺激によるIgM抗体産生能もPEAは抑制することも判明した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、PEAによるTLR9刺激の抑制作用に関する詳細な分子メカニズムの解明を目指す。例として、PEAがTLR9の細胞内シグナル伝達を抑制するか検証するため、シグナル伝達分子(JNK, ERK, p38, IκBなど)の活性化レベルをウエスタンブロット法で解析する。また、SLEの病態形成に関与するとされているTLR9刺激による形質細胞様樹状細胞からのIFN-α産生に関して、PEAが抑制するか検証する。また、個体レベルの解析では、PEAがMRL/lprマウスの腎炎や自己抗体産生を抑制するか検討する。以上の解析を進め、SLEの病態形成機序と関連する炎症や自己免疫反応におけるPEAの新たな役割を明らかにし、成果を学術論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究の一部は、前年度までの研究課題の延長として取り組んだ実験系が多く、消耗品の発注が想定より少なく済んだことが一因と考えられる。 次年度使用額は引き続き消耗品として使用し、さらに論文執筆や投稿料としても使用予定である。
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