研究実績の概要 |
研究代表者が所属する研究室では、SLEモデルマウスと野生型マウス中の脂質メディエーター濃度を、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)にて網羅的に解析した。その結果、パルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)の濃度が、SLEモデルマウスでは血中及び脾臓内で野生型マウスに比べて低値であることを明らかにした。我々はSLEの病態形成に関わるToll様受容体9(TLR9)刺激に対するPEAの作用を解析した。その結果、骨髄由来樹状細胞や脾臓B細胞、マクロファージ細胞株(Raw 264.7細胞)といった免疫担当細胞において、TLR9刺激による炎症性サイトカインの産生をPEAはmRNAレベルおよびタンパクレベルの両者で抑制することを見出した。さらに、骨髄由来樹状細胞やB細胞におけるTLR9刺激による細胞表面マーカー(CD86、CD40)の発現や、B細胞における細胞増殖及びIgM産生をPEAが抑制することも見出した。また、TLR9刺激薬のCpG-ODNと、D-ガラクトサミンを用いたseptic shock modelマウスに対して、PEAを投与した結果、血中IL-6濃度が低下した。さらに致死量のCpG-ODNとD-ガラクトサミン投与下において、PEAを投与することによってマウスの生命予後が劇的に改善することを見出した。また、Raw 264.7細胞においては、TLR9以外のTLR受容体(TLR2, 3, 4, 7)刺激による炎症性サイトカイン産生をPEAは抑制することを見出した。我々の一連の研究結果から、PEAはSLEなどのTLR9が関与する疾患、さらには他のTLRが関与する幅広い炎症性疾患において、将来的に治療応用としての発展が期待される。
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