研究課題/領域番号 |
18K16160
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
井上 英樹 昭和大学, 医学部, 助教 (80813162)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アレルギー性喘息 / マウス / 気道炎症 / ErbB2 / Siglec-F / アルテルナリア / BALB/c / RNASeq |
研究実績の概要 |
BALB/cマウスに真菌の1種であるアルテルナリア吸入を行い、アレルギー性喘息モデルマウスを作成し、気道上皮組織における気道炎症を評価し、その原因と治療方法を探索することが本研究の目的である。 先行研究では、喘息患者の気道上皮細胞において上皮成長因子受容体であるErbB2発現の低下が認められた。これをふまえてアレルギー性喘息モデルマウスの上皮組織におけるErbB2の発現とアレルギー性気道炎症の関連を検討している。アルテルナリアを吸入させたアレルギー性喘息モデルマウスにおいて気道において著明な好酸球浸潤が認めた。また気道上皮組織においてIL1RL1遺伝子の発現亢進が認められた。IL1RL1はIL-33の受容体であり自然免疫を介した好酸球性炎症に関与する。アルテルナリア曝露による好酸球性気道炎症は、IL1RL1が関与する可能性がある。また、気道組織に浸潤した好酸球はErbB2を発現していた。一方、気道上皮細胞におけるErbB2の発現については有意差を認めなかった。 アルテルナリア吸入マウスにErbB2阻害剤であるTrastuzumabを投与したところ、気道組織下の好酸球性浸潤が減弱していた。また気道の粘液産生も抑制されていた。このことから、アルテルナリア誘導のアレルギー性気道炎症に対して、ErbB2シグナルの抑制がその改善に関与している可能性が示唆された。 アルテルナリア吸入に伴う気道上皮組織の遺伝子発現の変化を見るために、アルテルナリア吸入マウスの気管・気管支組織を用いたRNAシーケンスによる網羅的遺伝子発現解析を行った。遺伝子オントロジーによる解析では、コントロールマウスと比較して、アルテルナリア吸入マウスでの気管支では、炎症に関わる遺伝子群の発現が亢進していた。一方、アルテルナリア吸入マウスでは防御反応に関わる遺伝子群の発現が低下していたことが新たにわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルテルナリア吸入によって、好酸球性気道炎症が惹起されることを確認した。気道上皮細胞におけるErbB2の発現と気道炎症との関連は示すことができていない状況であり、引き続き検討を行う。アルテルナリア吸入マウスの気管・気管支組織の効率的なtotal RNA抽出方法を確立し、一定の品質を担保したRNAシーケンスデータを取得できた。網羅的遺伝子発現解析については計画通りに施行することができた。アルテルナリア吸入によって変化した気管・気管支組織での発現変動遺伝子を同定できた。これらは、本研究独自の知見であり、アレルギー性喘息の病態解明に役立つものと考えられる。この結果につき現在論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
気道上皮細胞におけるErbB2の発現については、これまでは免疫組織化学染色による検討のみであったため、蛍光免疫組織化学染色による、より高感度な検出方法を試みる。RNAseqの結果から、アルテルナリア吸入によって、気道上皮組織において上皮バリアーに関連する遺伝子発現の低下が認められた。アルテルナリア吸入によるアレルギー性気道炎症を改善するために、気道上皮バリアーに関連する因子の探索をすすめる。また、RNAシーケンスによって得られたデータを探索し、アレルギー性気道炎症に関与する新たな因子を探索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1月にRNAシーケンスを外部委託し作業終了が3月であった。その支払いを4月におこなうことになったため、次年度使用とした。次年度使用額の649600円と次年度予算の一部をRNAシーケンス解析費用にあてた。
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