研究課題/領域番号 |
18K16163
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
宮川 一平 産業医科大学, 大学病院, 助教 (10525463)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒト間葉系幹細胞 / ヒト骨細胞 / バイオマテリアル |
研究実績の概要 |
骨細胞に関しては、マウスを中心とした研究が主体で、ヒトにおいては十分に検討されていない。本研究では、in vitroにおいて三次元培養系を用いたヒト間葉系幹細胞からの効率的なヒト骨細胞分化誘導法を確立するとともに、ヒト骨細胞に対する炎症性サイトカインの作用、炎症性サイトカイン刺激を受けた骨細胞の骨代謝への影響を明らかにすることで関節リウマチ(RA: Rheumatoid arthritis)病態におけるヒト骨細胞の病的意義を明らかにし、骨細胞に着目したRA新規治療法の開拓に繋げることを目指した。ゼラチンハイドロゲルスポンジを足場とした三次元環境下でヒト間葉系幹細胞を28日間培養したところ、走査電子顕微鏡による形態学的な評価において、骨細胞に特徴的な突起の伸長を伴う細胞が分化誘導されることが確認された。また透過電子顕微鏡および質量分析において、同細胞周囲のリン酸カルシウムの沈着が確認された。その上で骨細胞マーカーの発現をRT-PCR法で評価したところ、IL-1β刺激およびPPARγアンタゴニストの添加によりBSP(bone siaroprotein)、MEPE(matrix extracellular phosphoglycoprotein)、SOST(sclerostin)、PHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)の発現が亢進した。本研究の結果から、in vitroにおけるヒト間葉系幹細胞の三次元培養によりヒト骨細胞が分化誘導され、さらにIL-1β刺激とPPARγ阻害により効率化される可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ヒト骨細胞の効率的な分化誘導法を確立するともとにRA病態における骨細胞の病的意義を明らかにすることを目的としている。そのためヒト骨細胞を分化誘導することが最も研究の基礎となる。初年度までに三次元培養法を用いることでヒト間葉系幹細胞からヒト骨細胞を分化誘導することができ、さらにその効率化に繋がる培養条件の設定も可能となっている点から本研究は概ね順調に進展しているものと考える。一方、RA病態におけるヒト骨細胞の病的意義を明らかにするためには、ヒト骨細胞の詳細な機能解析が必須である。本年度は、初年度に分化誘導可能となったヒト骨細胞を用い炎症環境下(RA病態)におけるヒト骨細胞の機能評価(破骨細胞や骨芽細胞への影響)を計画し実行中である。
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今後の研究の推進方策 |
RA病態におけるヒト骨細胞の病的意義を明らかにするためには、ヒト骨細胞の詳細な機能解析が必須であると考え、本年度は、初年度に分化誘導可能となったヒト骨細胞を用い炎症環境下(RA病態)におけるヒト骨細胞の機能評価(破骨細胞や骨芽細胞への影響)を計画した。具体的には、炎症性サイトカイン刺激を加えたヒト骨細胞と無刺激ヒト骨細胞を用い、①RANKL、OPG、スクレロスチン産生能(RT-PCR法・ELISA法により評価)、②単球由来の破骨細胞前駆細胞との共培養実験における破骨細胞分化・成熟への作用と骨吸収能への影響(マーカー遺伝子発現、TRAP陽性細胞数・細胞核数・細胞融合、ピットフォーメーションアッセイにより評価)、③ヒト間葉系幹細胞との共培養実験における骨芽細胞分化への影響(マーカー遺伝子の発現、アリザリンレッドS染色・ALP染色により評価)を評価する。なお、本研究で用いる破骨細胞前駆細胞は、健常人末梢血より分離したCD14陽性細胞に3日間M-CSFを加え誘導したものを用いる。すでに本手法により誘導される細胞は、破骨細胞のマーカー遺伝子(NFATc1, カテプシンK)を発現していることをRT-PCR法で確認している。以上、本年度は、骨細胞に対する炎症性サイトカイン刺激の影響、炎症性サイトカイン刺激時のヒト骨細胞の骨代謝への影響を明らかにすることに主眼を置き研究を推進する。
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