骨細胞に関しては、マウスを中心とした研究が主体で、ヒトにおいては十分に検討されていない。本研究では、in vitroにおいて三次元培養系を用いたヒト間葉系幹細胞からの効率的なヒト骨細胞分化誘導法を確立するとともに、ヒト骨細胞に対する炎症性サイトカインの作用、炎症性サイトカイン刺激を受けた骨細胞の骨代謝への影響を明らかにすることで関節リウマチなど異常骨代謝病態おけるヒト骨細胞の病的意義を明らかにし、骨細胞に着目した新規治療法の開拓に繋げることを目指した。ゼラチンハイドロゲルスポンジを足場とした三次元環境下でヒト間葉系幹細胞を28日間培養した。電子顕微鏡および質量分析で形態およびリン酸カルシウムの沈着を、骨細胞マーカーの発現をRT-PCR法で評価した。走査電子顕微鏡による形態学的な評価において、骨細胞に特徴的な突起の伸長を伴う細胞が分化誘導されることが確認された。また透過電子顕微鏡および質量分析において、同細胞周囲のリン酸カルシウムの沈着が確認された。その上で骨細胞マーカーの発現をRT-PCR法で評価したところ、それぞれIL-1β刺激およびPPARγアンタゴニストの添加によりBSP(bone siaroprotein)、MEPE(matrix extracellular phosphoglycoprotein)、SOST(sclerostin)、PHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)の発現が亢進した。またそれらはレチノイン酸を添加し培養することで増強された。本研究の結果から、in vitroにおけるヒト間葉系幹細胞の三次元培養によりヒト骨細胞が分化誘導され、さらにIL-1β刺激とPPARγ阻害およびにより効率化されることが示された。
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