研究課題/領域番号 |
18K16164
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
成澤 学 産業医科大学, 医学部, 助教 (10553802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 樹状細胞 / 関節リウマチ / T細胞 / CTLA-4Ig |
研究実績の概要 |
ヒト単球(Mo)を用いたin vitroでのさらなる解析を進めた。樹状細胞由来破骨細胞(DC-OC)は単球由来破骨細胞(Mo-OC)に比して融合性が強く巨大化傾向を呈するが、未成熟樹状細胞(DC)とMoを同数、同条件で培養すると分化した破骨細胞(OC)数はDC-OCで有意に少なく、3~4核のOC、5核以上のOCそれぞれ分けて検討してもその結果は同じでありDC由来のOCは癒合しやすいことが確かめられた。そこでPCR法を用いた検討を行ったところ、Mo-OCに比してDC-OCでは有意にDC-STAMP発現が高いことを明らかとした。 関節リウマチ(RA)と非RA患者の人工膝関節置換術持に得られる滑膜組織を用いてDC-OCが存在するか検討したところ、RAのみでOCと考えられるTRAP陽性多核細胞を確認でき、DC-OCは病的な環境下でのみ分化することが示唆された。確認できたTRAP陽性多核細胞のうち、およそ3分の1の細胞が免疫染色でCD86も陽性であり、OCのサブタイプとしてDC-OCの存在が示唆される結果であった。 この病的と考えられるDC-OCに対する薬剤の検討において、MoまたはDCからOCへの分化の途中段階でCTLA-4Igを加えると、Mo-OC分化抑制は既報通りに認められる一方、DC-OC分化抑制効果は明らかでない。この違いに関する検討を行ったところ、DC-OCではMo-OCと異なりCTLA-4Igによるアポトーシスが起こりにくいという結果が得られた。 これまでの結果を踏まえて、まず動物実験を含めない段階までの研究結果をまとめ、繰り返し論文投稿に取り組んでいるところである。それとともに動物実験を進める準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in vitroで必要とされる予期していなかった追加実験が少なくなく、新たな実験方法にも積極的に取り組んで研究を進めているが、1クールに3週間程度を要するプロトコールであることから、実験結果の再現性の確認も含めた実験期間が非常に長期に及んでしまっている。そのため、予定していた動物実験にまで取り組めていないのが現状である。 そこで研究の進行と並行し、動物実験を含まない段階で実験結果をまとめて論文投稿に取り組んでいるが、rivisionまで到達したものの最終的にrejectに至ってしまうなどさらに進捗状況が前進しない状態が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
CTLA-4Igによる効果の違いに関する追加実験など、in vitroで明らかにする必要のある追加の研究を引き続き行っていく。 その上で、関節リウマチ患者における活動性を伴う増殖した病的滑膜を直接評価することは現実的に困難であるため、ラット関節炎モデルを用いたin vivoでの解析を開始していくこととする。関節リウマチモデル動物であるコラゲン誘導性関節炎(CIA)モデルラットの滑膜を用いて、OCの確認とともに、そのサブセットと考えられるDC-OC様細胞の証明をまずは行う。それらに引き続き、in vitroで得られた研究結果と一致する形態学的特徴が確認できるかを評価する。その上で、関節炎、関節破壊などの指標との関連などを検討し、DC-OCの生体内での病的意義をさらに明らかにしていく。
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