まず、リン酸化酵素 CaMKIIのIgEクラススイッチ (IgE CSR) への影響をさらに詳細に検討するために、CaMKIIノックダウン細胞株の樹立を目指した。ヒトB細胞株 Ramosを用いてsh CaMKIIプラスミドの導入をElectroporation法を用いて行った。本法の条件はGFPプラスミドを用いて確立し、sh CaMKIIプラスミド導入後、ピューロマイシンによる選別を計画した。しかし、sh CaMKIIプラスミド導入後は薬剤による選別を行う前にRamos細胞が死滅し、細胞株の樹立は困難であった。そこで再びCaMKII阻害剤を用いた手法を継続し、IgE CSRおよびIgG4 CSRのシグナル伝達経路解析を行った。 一方、CaMKIIと関連の深い、プロテインホスファターゼ (PP) によるIgE CSRへの制御については一定の知見を得ることができた。まずRamos細胞にIgE CSRを誘導するIL-4および抗CD40抗体の刺激を行うと同時に、PP阻害剤で処理を行うと、形態学的な変化への影響が認められた。IL-4および抗CD40抗体の刺激はB細胞に homotypic aggregationを起こすことが知られているが、その意義や制御機構はよく分かっていない。この反応はRamos細胞でも同様に観察できたことから、PP阻害剤をはじめ、CaMKII阻害剤や他のリン酸化酵素阻害剤による処理を行い、形態を観察した。するとPP阻害剤と一部のリン酸化酵素阻害剤存在下では形態に変化が認められた。またPP阻害剤存在下ではIgE CSRの指標であるεGLTの合成結果に影響が認められたこと、さらにRamos細胞の表面分子の発現変化をフローサイトメトリー法で検出したところ、これらにも一定の傾向を見出すことができ、IgE CSRにおける新たな制御機構の解明へとつながると考えられる。
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