研究課題
本研究は、屋内塵埃中の食物抗原は濃度依存性に、離乳食開始前の乳児における食物抗原感作成立に影響を与えるか検証することを主要な目的とし、現在当科で行われている出生コホート研究(「アレルギー疾患におけるハイリスク乳児の追跡およびアウトカム評価」)の参加者を対象とした、出生コホート内観察研究である。この出生コホート研究では妊娠中期にリクルートを行い、アンケート調査、医師診察によるアトピー性皮膚炎診断に加え、生後6か月時に血液検査によるアレルゲン特異的IgE測定を実施する。本研究では、コホート登録者を対象とし、生後6か月時点における屋内塵埃サンプルを採取のうえ、塵埃中の食物抗原量を曝露要因とした、参加者の感作状況および食物アレルギー発症の有無について関連性を検証する。初年度である2018年度においては、本研究を実施するにあたりパイロット研究による環境抗原の測定を実施し測定系を確立すること、また出生コホート研究参加者を対象者とするために新たなロジスティクスを構築すること、その上で倫理審査委員会へ申請することを実施目標とした。下に記すように全ての研究項目においておおむね順調に実施されている。
2: おおむね順調に進展している
以下の様に2018年度に予定した研究項目について、おおむね順調に進展している。パイロット研究による環境抗原の測定:環境塵埃中アレルゲン測定系確立のため、乳幼児のいる4家庭における塵埃サンプルとして50検体の解析によるパイロット研究を行った。当初はダストサンプル1つにつき複数の抗原濃度を測定する予定であったが、卵エライザキットでは希釈後にSDSで抽出するため抽出後の検体ではDer f 1が検出されず、希釈倍率の変更や高感度測定を行いSDSの影響を抑える方法で測定など、試行錯誤するも感度以下の結果となり結論としてダストサンプルは抗原毎に採取する方法を選択した。ロジスティクス構築:パイロット研究の結果から、乳児のベッドや乳児がまとう衣類の中で下腿に付着する食物アレルゲンが測定部位として妥当と判断し、採取法パンフレットを作成した。出生コホート研究における環境塵埃サンプル採取キットの配布月齢、採取月齢ならびに回収時期などロジスティクスを確定し、成育医療研究センター倫理審査委員会に提出し、現在承認待ちの状態である。参加者数:研究期間中の目標参加者数を累計100名としているところ、2018年度中に出生コホート研究の登録者が40名となっており、おおむね順調にリクルートが進んでいる。
2019年度の研究推進方策としては、引き続き参加者登録数を増やし、得られたサンプルの測定を実施する予定である。現在登録されている乳児(妊婦)が生後6か月となる時点においてサンプル回収が開始される。まとまったサンプル数が得られた時点で順次測定を行う。測定は2018年度に得られた知見を元に実施する。2019年度末に、中間解析を行う。解析では、当センターの生物統計かと協議し因果推論を行う。交絡因子として乳児湿疹、経口摂取既往の有無などを調整に用いることを検討する。中間解析で条件付検出力を計算し追加症例数の再設定を行う場合があり、追加が必要とされた場合は2020年度(最終年度)において、当センターでの一般出生時および初診アレルギー疾患のある6か月以内の乳児を対象として対象者を広げることを検討する。
次年度におけるサンプル測定費用に充てられる。
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Pediatric Dermatology
巻: 36 ページ: 213~218
10.1111/pde.13752