研究実績の概要 |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は、カルバペネム系薬剤及び広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す大腸菌や肺炎桿菌などの腸内細菌科細菌である。CREによる感染症は、肺炎、血流感染症、尿路感染症、手術部位感染症、膿瘍等さまざまな感染症を起こすが、多くは治療困難であり、特に菌血症で死亡率が極めて高い。CREによる医療関連感染や集団感染事例が世界中で報告されており、国境を越えてこれらの耐性菌や耐性遺伝子が拡散しつつある。CREにおけるカルバペネム耐性は、カルバペネム系抗菌薬分解酵素である各種カルバペネマーゼの産生、あるいは他のβ-ラクタマーゼの産生と細胞膜透過性低下の組み合わせによって獲得されるものが知られている。カルバペネマーゼ遺伝子は、プラスミド上に存在することが多く、接合伝達などにより腸内細菌科の同菌種および他菌種に伝播し拡散することがあるため、感染対策を困難にさせている。本研究は、全ゲノム解析によるCREの伝播メカニズムの解明することを目的とする。2018年において大学病院AのCRE 感染症および保菌の患者由来のCRE 34株を収集した。微量液体希釈法により薬剤感受性試験を行い、各種抗菌薬の最小発育阻止濃度を決定した。CRE臨床分離株からDNA抽出を行い、特異的なPCRプライマーを用いてカルバペネマーゼ遺伝子(KPC, NDM, VIM, IMP, OXA-48)を検出した。カルバペネマーゼ産生腸内科細菌科細菌(CPE) 3株(すべてE. cloacae)に対して次世代シークエンサーを用いて全ゲノム解析を行った。In silico MLSTを行い、シークエンスタイプを決定した。次世代シーケンサーの特徴を活かしてカルバペネマーゼ遺伝子の型別、その他の耐性遺伝子、プラスミドのレプリコンを網羅的に検索した。
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