研究課題
【研究目的】小児の急性脳炎脳症は、ウイルス等の感染を契機に発症する中枢神経障害であるが、臨床経過や画像診断で診断する他なく、診断や予後予測に役立つバイオマーカーが望まれる。エクソソームは細胞から分泌される直径100nm程度の小胞体で、中にマイクロRNA等を包含しており、細胞間相互作用を担うと考えられる。代表者らは、急性脳炎脳症に有用なバイオマーカーの探索および発症機序の解明のため小児急性脳症患者・対照となる患者の血漿エクソソーム中の次世代シーケンサーによるマイクロRNAの網羅的解析を計画した。(1)検体・臨床情報の収集急性脳症が疑われた患者で、当院へウイルス検査のためのPCRの依頼があった症例の中で、当研究参加への同意を本人または保護者から得られた症例を本研究対象として登録し、検体・臨床情報はすべて匿名化し保管した。脳症症例10例、熱性けいれん症例10例の血清を-30度保存した。(2)エクソソーム抽出・small RNA抽出・ライブラリ作成至適条件の検討のため、健常成人の血清を用いて以下を行った。miRCURY Exosome Isolation Kit-Serum and Plasmaを用いて血漿または血清500μl より抽出した。抽出したエクソソームをQIAGEN miRNeasy Micro Kitを用いてsmall RNA抽出を行った。さらに、抽出したRNAをNEB NEBNext small RNA Library Set for Illuminaを用いてライブラリを作成した。作成したライブラリをbioanalyzerで解析し、目的であるmiRNAを含む分画の割合について評価した。
3: やや遅れている
血清エクソソームからライブラリを作成したところ、過年度の髄液での研究(研究科題名 小児急性脳症の網羅的メタボローム・マイクロRNA解析を用いたバイオマーカー探索 課題番号15J40217)と同じ方法では想定していたより質のよいライブラリが作成できなかった。バイオアナライザーの結果より、アダプター・ダイマーと思われる分画の割合が多く、原因としてインプットのRNAの量や質に問題があると思われた。そこでRNA抽出プロトコールを再検討したものの改善がみられなかったので、血清からエクソソームを抽出するプロトコールについて再検討予定である。
(1)血清エクソソーム抽出方法の検討 miRCURYのほかに、Exoquick、PureExoの製品とエクソソームの量や質について健常成人検体を用いてウェスタンブロット及びRTPCRにて評価する。(2)ライブラリ作成・評価 エクソソーム抽出方法を決定したら、ライブラリ作成を行い、バイオアナライザで評価する。(3)マイクロRNAの発現解析と検証 ライブラリ作成まで確認できたら、保存していた症例と対照の検体を用いて解析する。保存血清からエクソソームを抽出し、さらにsmall RNAを抽出したのちライブラリ作成を行いMiseqで判読する。シーケンスデータはCLC workbenchを用いてクオリティトリミング、アダプタートリミングする。トリムした配列からマイクロRNAのデータベースであるmirBaseを用いてマイクロRNAを同定し、発現量を補正して症例グループ間で比較解析を行う。得られたバイオマーカー候補のマイクロRNAの発現定量についてPCRを用いて検証する。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)
Cancer medicine
巻: 7(4) ページ: 1275-1284
10.1002/cam4.1311
Japanese journal of infectious diseases
巻: 71(4) ページ: 309-311
10.7883/yoken.JJID.2017.577
Journal of medical virology
巻: 90(12) ページ: 1814-1821
10.1002/jmv.25263