研究課題/領域番号 |
18K16174
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
尾鶴 亮 鳥取大学, 医学部, 助教 (70763035)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レプトスピラ / レプトスピラ症 / ワイル病 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度得られた遺伝子組換えレプトスピラM1株、M2株に関する解析を行った。 M1株、M2株はトランスポゾンによるランダム挿入変異体であり、共に同一の鞭毛構造に関する遺伝子Aにトランスポゾンの挿入が起こっている変異体である。しかし遺伝子A内での挿入位置が異なり、その結果感受性動物であるハムスターへの病原性が異なることが示された。遺伝子Aがコードするタンパクは336a.a.(アミノ酸)であり、C末端側にはペプチドグリカンを結合するためのOmpA-like domainが存在しており、これによって鞭毛構造物を菌体に固定していると考えられる。またシグナル配列を持ち外膜に局在していると考えられているが、レプトスピラ属細菌以外でAと相同性の高いタンパクは見つかっておらず、実際の機能や局在は不明である。M1株、M2株での遺伝子Aのコードするタンパクはそれぞれ167a.a.、26a.a.となっており、特にOmpA-like domainはM1株、M2株共に欠損しているため通常の機能は果たしていないと考えられる。しかし一見機能欠損の大きいM2株の方で病原性低下は見られず、M1株で病原性の低下が起こっていることから、遺伝子Aは機能的に存在せずともレプトスピラの生育に影響はないが、OmpA-like domainを欠く状態で26a.a~167a.a.間に存在する未知のドメインが存在することで病原性の低下を招いていることになる。 またA直下には2価イオン排出ポンプBが存在しており、トランスポゾンの挿入がBの発現にも作用している可能性があった。そこでZn2+イオンを添加した状態でM1株、M2株、野生型L495株を培養すると、M1株、M2株共に増殖速度が低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は2019年10月~12月において、鳥取大学医学部動物実験施設感染区域において工事が行われたため、その期間動物実験を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
M1株、M2株感染ハムスターの病理学的解析を行う。特に経皮感染時の皮下脂肪組織での定着様式を形態学的に解析し、増殖速度をqPCRを用いて定量する。またトランスポゾンの挿入が起こっている鞭毛関連遺伝子A、その直下に存在する2価イオン排出ポンプ遺伝子Bのレプトスピラでの機能や遺伝子発現、病原性に関する解析を行い、M1株とM2株で起こっている病原性の変化について詳細に検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は2019年10月~12月において、鳥取大学医学部動物実験施設感染区域の工事が行われたため、その期間動物実験を進めることができなかった。 次年度はこの期間に行うはずであった動物実験を行い、その動物購入費用・飼育料として使用する。
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