本研究は、抗レトロウイルス療法(ART)中の感染者についてメモリーT細胞がどの程度保たれているのか、またそれらメモリーT細胞からHIV特異的CTLを誘導することができ、慢性感染時のCTLと同様の感染細胞傷害能力を保持しているかどうかの疑問を解明することを目的としている。 これまで我々のグループは、無治療慢性日本人HIV-1感染者のCTL反応と感染者の病態を解析することで、HIV-1コントロールに重要な役割を持つCTLを明らかにしてきた。その結果、合計13種類のHIV-1増殖抑制能を有するCTLを特定した。これら13種類を対象として、ART中の感染者において各エピトープに対するCTL反応を、IFN-γ ELISPOT assayによって解析した。まず、先行研究にて慢性感染時に何らかのCTL反応が確認されており、ART後に引き続き採血が可能であった18名の感染者の血液を収集した。収集した血液検体よりPBMCを分離しCTL反応を調べたところ、慢性感染時より大きく減弱しているものの、18名中13名でいずれかのエピトープに対するCTL反応が認められた。一方でテトラマーを作製し、より感度の高い検出方法を試みたところ、IFN-γ ELISPOT assayではCTL反応無しと判定されたエピトープでも、特異的T細胞の集団が検出された。 長期にわたるARTにより抗原に即座に応答することのできるメモリーT細胞の数が予測通りに減弱していたものの、数多くの検体でCTL反応が認めれた。今後検出されたCTLの機能を詳細に解析することで、リザーバー排除の行う場合の有用なCTLの候補を絞っていくことができると考えられる。
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