研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスの重症化リスクファクターとしてエピジェネティックステートに着目し解析を進めてきた。同一の遺伝的背景をもつ気管支上皮細胞から樹立した不死化細胞のうち感染後のインフルエンザウイルス増殖性が大きく異なる2株を用いて、感染前の特定部位のエピジェネティックステートの感染への関与を検討した。いくつかの候補のうちIRF7とIFN-βにおけるCpG高メチル化ステートがIFN-β発現抑制に働くことを明らかにした。加えて、これら領域における脱メチル化の誘導はインフルエンザウイルス感染後の複製ウイルスコピー数の低下を誘導した。遺伝的背景が異なる一般的な呼吸器細胞株であるHEp-2細胞においても同様の効果がみられたことから、特定のCpGメチル化ステートの変化により、ウイルス感染防御が誘導されることを報告した。 また、エピジェネティックステートを変化させる因子にも着目し解析を行った。呼吸器疾患と細菌叢は密接に関係することに加え、細菌叢の変化はエピジェネティックステートの変化を誘導することが報告されているため、細菌叢に着目した。次世代シーケンサーを用いた解析では、上気道のStreptococcus, Neisseria属の細菌はインフルエンザ症状の変化させる報告があるため、これら細菌属に着目し、インフルエンザウイルスの感受性が変化するかどうか評価した。それぞれ培養した細菌の上清で肺上皮細胞を刺激すると、インフルエンザウイルス複製が変化することが見られた。細菌叢の変化はエピジェネティックステートの変化を誘導することで、ウイルス感受性を変化させ症状を変化させることが考えられる。
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