最終年度では、不妊治療中患者計84名についてさらにカルテ情報を回顧的に調査し、最終的に卵管閉塞や男性因子により除外となった71名について、6ヶ月及び12ヶ月以内の妊娠率を集計した結果、それぞれ28.2%、43.7%であった。6ヶ月及び12ヶ月以内の妊娠の有無により多様性解析を実施した結果、どちらにおいても群間に有意な差は認められなかった。 次に、卵管機能に異常がなく、かつ夫の精子の運動性や奇形率にも問題がない患者23名を対象とし、6ヶ月及び12ヶ月以内の妊娠率を調査した結果、それぞれ30.4%、39.1%であった。6ヶ月及び12ヶ月以内の妊娠の有無による多様性解析の結果、12ヶ月以内の妊娠の有無においてはα及びβ多様性に有意な差は認められなかったものの、6ヶ月以内の妊娠の有無においてはβ多様性において菌叢に有意な差が認められた(p=0.044)。さらに、群間比較解析の結果、妊娠群ではStreptococcus及びPrevotellaceae_UCG_001が、非妊娠群ではLactobacillus及びGardnerellaが特徴的な細菌として検出された。 本研究結果より、卵管や精子機能に異常がなくとも妊娠率に大きな変化が認められなかった一方で、妊娠の有無により腟内菌叢が有意に異なったことから、腟内細菌叢は妊娠の成功に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された。また、一般的に腟内細菌叢の最優勢属種であるLactobacillusの占有率が高いことが必ずしも妊娠に寄与するわけではない可能性が示唆された。
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