研究課題/領域番号 |
18K16189
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
中村 彰宏 天理医療大学, 医療学部, 講師 (30647087)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Escherichia coli / sequence type 131 / ESBL / carbapenemase / proteomics |
研究実績の概要 |
近年、ESBLやカルバペネマーゼを産生するEscherichia coli ST131クローン(ST131)の世界的なパンデミックが問題視されているが、その原因は未だ明らかになっていない。われわれはST131パンデミックの原因を追究すべく、MALDI-TOF MSを用いてST131特異的タンパク質を探索し、その同定および機能予測を試みた。 対象は国内医療機関31施設から分離されたESBL産生E. coli 197株(内ST131:98株)とし、ClinProToolsを用いてST131特異的ピークを抽出した。そのピークを示すタンパク質は逆相カラムによるHPLCで単離精製し、LC-MS/MSを用いたタンパク質同定、さらにDNAシークエンス解析を実施した。また、同定されたタンパク質は各種ウェブデータベースを用いてその機能予測を試みた。 本研究では、ST131特異的タンパク質として、7655 m/zを示すE34Aアミノ酸置換を有するYahOタンパク質(ペリプラズム層局在、機能不明)が抽出され、またその他にも11783 m/zを示す可溶性チトクロームb562(ペリプラズム層局在、機能不明)、9710 m/zを示すHdeA(ペリプラズム層局在、酸ストレス応答に関与)および8351 m/zを示すYjbJタンパク質(細胞質局在、機能不明)などが検出された。また、11783 m/zを示す可溶性チトクロームb562において、ST131細分類Cクレードに特有の配列を発見した。現在のところ機能不明なYahOや可溶性チトクロームb562はその相互作用予測解析からバイオフィルム形成に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで各種ST131特異的タンパク質を同定完了した。今後,機能不明なタンパク質はそのコー ディング遺伝子を高発現pETベクターに遺伝子導入し,ST131およびnon-ST131特異的配列の2種類の遺伝子組み換え体を作製,その機能を比較する。pETベクターはpET-41aを使用し,それぞれGSTタグ付きおよびタグ無し2種類計4株の高発現株を作製し,GSTタグ付き抗原を用いたプルダウンアッセイによるタンパク質間相互作用解析,GSTタグ無し抗原を用いたウェスタンブロッティングのためのポリクローナル抗体作製,磁性ビーズによるポリクローナル抗体の精製および各種ブロッティングによる性能評価,各種抗体を用いたST131特異的タンパク質の細胞内局在性の確認などを実施する。また,各種タンパク質における1アミノ酸変異の影響を解明していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在進行中の各種タンパク質機能解析は、今までに実施してきた経験がないため、現在プロトコルを模索中である。今年度末でほぼ手法は確立したため、次年度に本格的な実験を実施遂行する。したがって、予算を少々次年度へ繰り越させていただいた。
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