研究課題/領域番号 |
18K16203
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
野津 雅和 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (50709144)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TGF-β / 2型糖尿病 / 骨粗鬆症 / 骨折 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病患者の血中TGF-β濃度と椎体骨折および骨粗鬆症との関連性を明らかにするため、結果収集を行った男性例において解析を行った。 対象は2016年1月から2018年3月に島根大学医学部附属病院に入院した2型糖尿病男性246例。骨代謝未評価、骨粗鬆症治療中、eGFR 30ml/min/1.73m2未満は除外し212例を検討した。血中TGF-β濃度はELISA法にて測定した。糖代謝、Ca代謝指標、骨代謝マーカー、骨密度および椎体骨折の有無を評価し、TGF-β濃度との関係を解析した。 【結果】212例の平均年齢 62.6歳、罹病期間 11.8年、HbA1c 9.3%。骨粗鬆症、椎体骨折、多発椎体骨折者数はそれぞれ88例、75例、34例。血中TGF-β濃度は年齢(r=-0.25)、罹病期間(r=-0.17)と負相関、BMI(r=0.16)、eGFR(r=0.18)、TRACP-5b(r=0.19)と正相関を認めた(全てp<0.05)。骨密度とは相関しなかった。血中TGF-β濃度は椎体骨折あり群となし群(49580, 49810pg/mL)、骨粗鬆症あり群となし群(48505, 50604pg/mL)で差を認めなかった。年齢、BMI、腎機能、HbA1cを考慮してロジスティック回帰分析を行ったが、血中TGF-β濃度と椎体骨折リスクとの関連は認めなかった。今回の結果から、血中濃度と骨組織における局所のTGF-βの影響はリンクしていない可能性、すなわち、骨代謝への影響に関しては骨組織においてAutocrineで作用するTGF-βの方がより重要である可能性が考えられた。女性例についての解析については当該年度に施行できなかったため、最終年度に予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的な検討についても解析がすすみ、男性例については解析を終えることができた。女性例についてもTGF-βの測定や解析を行う予定としているが、解析は間もなく終了予定であり、国内外の学会および誌面への報告も今回の期間内に予定している。
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今後の研究の推進方策 |
基礎的な検討では、TGF-βが2型糖尿病の骨質劣化および骨折リスクの原因となる可能性が示唆されたが、ELISAにより血中総TGF-βの測定により、椎体骨折のリスク評価は困難であると考えられた。得られたデータをさらに詳細に解析し、様々な交絡因子を考慮した条件下でTGF-β測定が臨床的な評価指標として用いることができるか否かについて追加で検討を行う予定である。 様々な因子の影響を受けることにより、シンプルなTGF-β濃度による骨折リスク評価は難しいことが明らかになったが、同時に測定および評価を行った様々な臨床指標を再度見直し、より優れた骨折リスク評価の因子について検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床的な検討について、女性例におけるTGF-β濃度測定が一部間に合わなかったため、次年度にELISAキットを購入する予定である。また、誌面報告により生ずる費用についても次年度に使用予定である。
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