肥満関連腎臓病の発症要因となる腎組織における自然炎症応答の亢進には、自然免疫を担当するミエロイド系細胞のオートファジー障害が関与するとの仮説に則り、平成30年度はミエロイド系細胞特異的にオートファジー機能異常を来す遺伝子改変マウスでの解析を進めた。当該マウスの腹腔に脂肪酸結合ウシ血清アルブミン(FA-BSA)を投与して尿細管障害を引き起こす疾患モデルや、当該マウスから単離したマクロファージをFA-BSAで刺激するモデルを解析した。組織化学観察から、当該マウスでは強く尿細管障害が惹起されることを確認している。ミエロイド系細胞におけるオートファジーは、脂肪酸負荷による尿細管障害を和らげる役割を果たしていることを見出している。 令和元年度は、平成30年度に確立した細胞レベルおよび個体レベルの系を用いて、引き続きミエロイド系細胞におけるオートファジーが自然免疫応答に及ぼす作用を検討した。さらに、プロテオミクスによりオートファジー不全のマクロファージから分泌亢進するタンパク質として、ProteinXを同定した。ProteinXのリコンビナントタンパク質やProteinXに対する阻害剤を当該マウスに投与し、ProteinXが当該炎症応答を亢進させ、FA-BSA誘導腎障害を増悪させることを見出している。 令和2年度は、①オートファジー不全のマクロファージからProteinXが分泌亢進する原因を調べるとともに、②ProteinXが腎障害を悪化させるメカニズムを調べた。マクロファージにおいて、FA-BSAはリソソーム障害を引き起こし、ProteinXはリソソームストレス(LLOMe)で分泌亢進する。ProteinXは、①オートファジー不全のマクロファージではさらに分泌亢進すること、②好中球の遊走や活性化を誘導することで尿細管障害を引き起こすことを見出している。
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