研究課題/領域番号 |
18K16205
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
黒田 雅士 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任助教 (00803579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞死 / 肥満 / NASH / 貪食 / 炎症 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は単純性脂肪肝と異なり高度な炎症と線維化を特徴とし、肝がん発症の重大なリスクとされている。NASH患者の約90%以上が内臓脂肪型の肥満であり、過剰の内臓脂肪蓄積はNASHの増悪因子の一つとして知られる。肥満脂肪組織由来の何らかの因子がNASH病態に関与すると考えられるが、詳細は明らかでない。本研究では脂肪組織由来の分泌因子MFG-E8(Milk Fat Grobule EGF8)とNASH病態との関連を明らかにすることを目的とする。 MFG-E8とNASHとの関連を検討するため、生後48時間後のストレプトゾトシン投与および高脂肪食負荷を組み合わせて作製するNASH-STAMモデルマウスを実験に供した。NASH-STAMマウスでの各組織MFG-E8のmRNA発現を解析したところ、脂肪組織で特に高発現であり血中のMFG-E8濃度が顕著に増加していた。MFG-E8とNASH病態との関連を検討するため、MFG-E8欠損マウスを用いてSTAM-NASHモデルを作製し、肝臓病理評価及び遺伝子発現解析を実施した。肝臓病理評価の一つであるNAS(NAFLD activity score)による評価を行ったところ、MFG-E8欠損マウスでは肝脂肪蓄積の程度に変化ないものの炎症状態及び風船様変性(Balooning)が改善していた。さらに肝組織線維化の程度についてSirius Red染色を実施し染色面積の定量を行ったところ、MFG-E8欠損マウスでは線維化面積の縮小が観察することができた。 定量的リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析の結果、MFG-E8欠損マウスでは肝臓におけるTNFαやIL6などの炎症性サイトカインやコラーゲンタイプIなどの遺伝子発現が低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の予定通りの実験・解析を実施することができた。 STAM-NASHモデルMFG-E8欠損マウスの肝組織遺伝子発現変化、HEおよびSiriusRed染色による組織学的評価、血液生化学的検査などの解析は予定通り完了している。免疫組織染色についてTUNEL染色法による死細胞の検出、マクロファージ抗原F4/80によるマクロファージの肝組織への浸潤・局在の変化等を解析を実施した。 血中のMFG-E8タンパク質について、感度・特異性の観点から濃度測定方法の確立に時間を要したが現在では超遠沈とウェスタンブロットによる解析方法を採用し問題なく測定可能である。 また現在、当初2019年度実施予定であったNASHによる肝細胞癌発症とMFG-E8との関連について解析検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度においてはMFG-E8によるNASH発症への分子機構について解明を進める。 肝細胞やマクロファージ機能に対するMFG-E8タンパク質の影響について培養細胞実験にて検討する。肝細胞癌発症に対するMFG-E8の作用について、現在の解析をさらに進めるとともに中和抗体またはMFG-E8抑制機能を有するドミナントネガティブ変異MFG-E8タンパク質のマウスへの投与実験により、治療標的としての可能性を探る。 以上までの研究成果を総合的にまとめ、国内外における成果発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度、MFG-E8と肝がん発症および長期予後に対する影響を継続して検討する予定であるが、これまでの途中経過からマウスの個体差によるばらつきが予想より大きく当初の予定より多くの個体を用いて詳細に解析する必要があると考えられたため。 次年度使用額のうち100,000円は解析に必要な遺伝子発現解析関連試薬(Sybr green, 逆転写キット等:消耗品)を購入予定とし、50,000円はMFG-E8中和抗体(または変異タンパク質:消耗品)、残りをメタボローム解析関連試薬(消耗品)の購入費用とする。
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