研究課題/領域番号 |
18K16211
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
竹島 健 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40647517)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IgG4関連疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまで十分な検討が行われていない IgG4関連疾患に伴う内分泌異常(下垂体病変、甲状腺病変、膵内分泌異常)に着目し、ステロイド治療後の内分泌機能温存に関わるパラメーターを探索とその病態を明らかにすることを目的の一つとしている。そのため、IgG4関連疾患患者を前向きに登録し、ステロイド治療前、治療中、維持期でそれぞれ患者血清・血漿および末梢血単核細胞を採取し、その解析と症例蓄積を図っている。また、ステロイド治療前の病理組織検体から、内分泌機能温存との関連を検討するため、病理組織学的解析を追加で行っている。 この中で我々は、糖尿病を合併したIgG4関連膵疾患(自己免疫性膵炎)患者で、ステロイド治療により膵α細胞から分泌されるグルカゴンが膵β細胞より分泌されるインスリンに比して優位に改善し、血糖コントロールが改善した一例を経験し、これを報告した(Diabetes Ther 2018)。本検討では、ステロイド治療前後でアルギニン負荷試験を行い、グルカゴンの初期分泌、頂値が顕著に改善することを示した。また、膵FNA組織の病理所見から、顕著な線維化と炎症細胞浸潤により膵島が消失する一方、散在性にインスリン・グルカゴン陽性細胞が存在し、後者が有意に残存していることを報告した(第61回日本糖尿病学会学術総会ポスター発表)。 現在、ステロイド治療前、治療中、維持期の末梢血から末梢血単核細胞を単離し、ステロイド治療前後で変化する血球プロファイルの解析と内分泌機能回復との関連を検討しており、今後更なる症例蓄積を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ステロイドに対する治療反応性および内分泌機能温存に関わるパラメーターの探索」を行うため、「IgG4関連疾患における内分泌異常の病態解明と治療反応性予測因子に関する前向きコホート研究(受付番号2115)」として倫理委員会の承認を得、IgG4関連疾患患者の登録を開始している。2019年4月現在、疑い症例を含め5症例を登録し、ステロイド治療前、治療後1か月、維持期で各々血液サンプルの採取を開始している。 「IgG4関連疾患に合併する内分泌臓器病変発症に関わる免疫学的機序の解明」については、フローサイトメトリーによる解析は、自己血を用いて条件検討を行い、各患者の末梢血単核細胞を単離後、表面抗原の解析を行っている。また、病理組織切片が得られた患者については、HE染色、免疫組織染色を用いて、内分泌細胞の残存・回復について検討を行っている。今後、症例がある程度蓄積した時点で、ステロイド治療前後に変化したリンパ球プロファイル、組織学的所見と内分泌機能改善有無との関係を検討していく。 「患者血清IgGsを用いた内分泌病変合併 IgG4関連疾患モデルマウスの作成」については、すでに得られた血清を用いて、モデルマウス作成に必要なIgGsを血清からの単離・精製する手法と実験条件の調整を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
「IgG4関連疾患における内分泌異常の病態解明と治療反応性予測因子に関する前向きコホート研究(受付番号2115)」として倫理委員会の承認を得、IgG4関連疾患患者の登録を開始しているが、2019年4月現在では疑い症例を含め十分な登録症例が得られていない。消化器内科、消化器外科へも研究協力を依頼し、更なる症例の蓄積を図っていく。 「IgG4関連疾患に合併する内分泌臓器病変発症に関わる免疫学的機序の解明」については、フローサイトメトリーによる解析を開始しており、今後、特定のリンパ球サブセットをソーティング、解析するための手法確立のため条件検討を行っていく。病理組織切片の解析については、過去の手術症例やFNA検体も用いた解析のため、「IgG4関連疾患患者の膵内分泌異常に関する後ろ向き観察研究」を新たに倫理申請し、倫理委員会の承認を得た。今後、十分な新規症例の組織検体が得られない場合は、過去の症例を加えて、免疫組織学的検討を追加していく。 「患者血清IgGsを用いた内分泌病変合併 IgG4関連疾患モデルマウスの作成」については、すでに得られた血清を用いて、モデルマウス作成に必要なIgGsを血清からの単離・精製する手法と実験条件の調整を行っていく予定である。
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