研究課題/領域番号 |
18K16213
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鴫山 文華 東邦大学, 医学部, 助教 (70808188)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠障害 / インスリン抵抗性 / 肝脂肪蓄積 / 2型糖尿病 |
研究実績の概要 |
2019年度はマウスのElovl3遺伝子配列に特異的な siRNAと、negative controlのsiRNAとを用いて、肝臓におけるElovl3の発現抑制が肝脂肪蓄積と耐糖能に与える影響をC57BL/6Jマウスを用いて検証していった。まず、Elovl3 のsiRNAは投与後約48時間でElovl3の発現抑制をnegative controlと比較して約75%抑制することを確認した。このElovl3とnegative controlのsiRNAを、2週間高脂肪食とスクロース水で飼育した13週齢のC57BL/6J雄マウスに投与した。投与から2日後に約6時間の睡眠障害をかけてマウスの肝臓を採取したところ、肝臓における中性脂肪はElovl3抑制群群においてnegative control群と比較して約70%近く減少していた(n=7 vs 13、 Elovl3抑制群群 vs negative control群、P<0.05)。さらに同様の手法を用いてsi RNAを投与し、腹腔内グルコース負荷試験を実施したところ、siRNAを用いて肝臓でのElovl3の発現を抑制したマウスではグルコース負荷から約30分後の血糖値がnegative controlと比較して有意に低値であった(n=8 vs 8、P<0.05)。同様にElovl3ならびにnegative controlのsiRNAを投与したマウス群を用いて行った肝臓での糖新生を評価するピルビン酸負荷試験においてはElovl3抑制群とnegative control群では有意な差は認められず、インスリン感受性を評価するインスリン負荷試験においても2群で有意差は認めなかった。以上より、肝臓におけるElovl3発現抑制により睡眠障害で惹起される脂肪肝が改善することが明らかとなった。一方で耐糖能に与える影響は軽微である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C57BL/6JマウスにsiRNAを投与し、実際にsiRNAが肝臓でのElovl3の発現を十分に抑制できていることが確認できたため、それらを用いて肝臓での脂肪蓄積の評価や耐糖能での評価を実施することができ、問題なく進行しているためおおむね順調に進行と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Elovl3発現抑制群とnegative control群においてRT-PCRを用いて脂肪合成遺伝子、脂肪燃焼遺伝子、糖新生遺伝子の発現を定量的に確認し、肝臓におけるElovl3の発現抑制が脂肪蓄積と耐糖能に与える影響に関して遺伝子レベルでの変化を検討する。遺伝子発現のデータが集まり次第、論文を作成していく。なお、本研究は2020年9月の欧州糖尿病学会に採択されており、そちらの学会においても成果の報告を行う予定である。
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