マウスのElovl3遺伝子配列に特異的な siRNAと、negative controlのsiRNAとを用いて、肝臓におけるElovl3の発現抑制が肝脂肪蓄積と耐糖能に与える影響をC57BL/6Jマウスを用いて検証していった。まず、Elovl3 のsiRNAは投与後約48時間でElovl3の発現抑制をコントロールと比較して約75%抑制することを確認した。このElovl3とnegative controlのsiRNAを、2週間高脂肪食とスクロース水で飼育した13週齢のC57BL/6Jマウスに投与した。投与から2日後に約6時間の睡眠障害をかけてマウスの肝臓を採取したところ、肝臓における中性脂肪はElovl3抑制群群においてnegative control群と比較して約70%近く減少していた(n=7 vs 13、 Elovl3抑制群群 vs negative control群、P<0.05)。さらに同様の手法を用いてsi RNAを投与し、腹腔内グルコース負荷試験を実施したところ、siRNAを用いて肝臓でのElovl3の発現を抑制したマウスではグルコース負荷から約30分後の血糖値がnegative controlと比較して有意に低値であった(n=8 vs 8、P<0.05)。同様にElovl3ならびにnegative controlのsiRNAを投与したマウス群を用いて行った肝臓での糖新生を評価するピルビン酸負荷試験においてはElovl3抑制群とnegative control群では有意な差は認められず、インスリン感受性を評価するインスリン負荷試験においても2群で有意差は認めなかった。各群において6時間の急性睡眠障害後に肝臓組織を採取しRT-PCRを実施し、肝臓での糖新生遺伝子や脂肪合成遺伝子の発現を確認したところElovl3siRNA投与群ではFASが有意に上昇していた。
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