研究課題/領域番号 |
18K16217
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
椎村 祐樹 久留米大学, 付置研究所, 助教 (40551297)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グレリン受容体 / 立体構造認識抗体 / GPCR |
研究実績の概要 |
グレリンペプチドとグレリン受容体の共結晶化および構造解析を目指して精製・結晶化を行った。また精製では多量のグレリンペプチドを必要とするので、効率よく精製するために精製条件の効率化を検討した。 グレリン受容体の熱安定性に対するグレリンペプチドの寄与を検討するために、グレリン受容体をリガンド非添加状態で精製して、精製後、様々な濃度でペプチドを添加した。その結果、グレリンペプチドは、グレリン受容体の熱安定性を向上させないことがわかった。一方で、最終収量は減少するものの、グレリン受容体はリガンド非添加であっても精製できることがわかったので、精製後、結晶化前にグレリンペプチドを添加することにした。そのほか、バッファーや精製プロトコルの見直しをしたが、収量の増加や熱安定性の向上は見られなかったことから、リガンド非添加でグレリン受容体を精製後、グレリンペプチドを添加して結晶化することにした。 グレリン受容体単体とグレリン受容体-抗体複合体の結晶化を行った。バッファーpHと塩の種類、沈殿化剤の濃度からおよそ1000通りの条件で結晶化を試みた。試行後、28日間、最初の1週間は毎日、その後は1週間ごとに各条件を顕微鏡観察したが、タンパク質の微小結晶らしきものは観察されなかった。またグレリン受容体-抗体複合体は、抗体との複合体形成によって熱安定性が5度程度向上していたが、同様の条件で結晶化を試みたところ、タンパク質の結晶らしきものは観察されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、考えていた通りに、グレリン受容体変異体の結晶が得られなかったため。 これまで発現・精製してきたグレリン受容体変異体は、グレリンペプチドとの結合能が野生型と比較して10倍程度減衰するので、不活性型にシフトした変異体であると考えている。不活性型固定変異体であっても、グレリンペプチドとの結合能を保持しており、十分な親和性を残しているので、現変異体であっても結晶形成するのではないかと考えたが、これまでのところ、グレリン受容体の結晶は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
現状のグレリン受容体変異体では、グレリンとの共結晶が難しいことが明らかになった。そのため、今後の研究の推進方策として次の2つを考えている。 1. クライオ電子顕微鏡を使った構造決定 近年、クライオ電子顕微鏡を使ったGタンパク質共役型受容体の構造解析が積極的に行われており、成功例も増えてきている。現在、グレリン受容体は精製はできるものの、結晶化で時間を費やしている。そこで、グレリン受容体においてもクライオ電子顕微鏡を用いて構造決定することを考える。クライオ電子顕微鏡を使うことで結晶を必要とせずに構造解析に進むことができるため、本研究課題の置かれている現状からもっとも最適な研究手法であると考える。その一方で、クライオ電子顕微鏡で構造決定するためには、150 kDa以上のタンパク質であることが望ましい。そのためグレリン受容体とGタンパク質 (Gqタンパク質) との複合体を精製して、クライオ電子顕微鏡に持ち込む必要がある。 Gタンパク質の中でもGqタンパク質との複合体はこれまでに報告がないが、ほかのGタンパク質複合体の論文を参考にして進める。 2. グレリン受容体活性化型変異体のスクリーニング 現在、精製しているグレリン受容体変異体は、グレリンペプチドとの結合能が野生型と比較して10倍程度減衰するので、不活性型にシフトした変異体であると考える。そのため、さらにグレリン受容体のアミノ酸変異をスクリーニングして活性型に固定された変異体を見出す。不活性型固定変異体をスクリーニングした際と同様に、出芽酵母発現系を用いて変異体を作出し、GFPを指標としたゲル濾過クロマトを行い、単分散性のよいものを抽出する。抽出された変異体をさらにシグナルアッセイにかけることで、活性型固定変異体をスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、想定していたグレリン受容体の結晶を得ることができなかったために、実験を円滑に進めることができなかったため物品の購入が少なかった。また構造解析および書類作成に使うPCの動作が悪くなったため、これの購入に当てる。
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