研究課題/領域番号 |
18K16219
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
辻本 哲郎 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医員 (60721743)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 肥満 / 心血管疾患 / 冠動脈疾患 / 心不全 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病患者において心不全が増加していることが報告されている。心不全には左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)と左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)があるが、HFpEFには治療法がなく、その病態解明と有効な治療法が求められている。病態としてNO産生低下など血管内皮機能障害との関係も考えられていることから、今回HFpEF患者に対し硝酸薬が有効かどうか検証した。その結果、HFpEF患者において硝酸薬の使用は逆に心血管イベントリスク増加と有意に関連していた(Tsujimoto et al. Mayo Clin Proc 2018)。この結果は糖尿病とは関係なく認められる結果であり、病態解明や治療内容の改善のためにさらなる調査が必要と考えられる。 また、2型糖尿病患者において、冠動脈疾患の治療方針も重要な臨床課題である。今回我々の研究で、2型糖尿病患者の冠動脈疾患に対し、心筋梗塞の既往がない場合は冠動脈バイパス術の方が内科治療より主要冠動脈イベントのリスクが有意に低いこと、また、心筋梗塞の既往がある場合にはPCIは内科治療よりそのリスクが高いことを報告した(Tsujimoto et al. Sci Rep 2018)。さらに、2型糖尿病患者の冠動脈疾患において、PAI-1/tPA比が高い場合はPCI治療の方が内科治療より主要冠動脈イベントリスクが高いことを報告した(Tsujimoto et al. JAHA 2018)。また、obesity paradoxの存在が示唆されている2型糖尿病と冠動脈疾患を併存した非肥満患者に対してはインスリン感受性を高める治療がインスリンを追加する治療より有効であることも報告した(Tsujimoto et al. Int J Cardiol 2018)。 研究は順調であり、糖尿病患者の治療方針のさらなる改善のため調査をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文として今年度もpeer review journalに4本アクセプトされており、研究費を含めて研究は順調であると考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病や肥満は心血管疾患やがんなど生命予後や生活の質(QOL)に関連する様々な疾患のリスクを上昇させることが示されている。そして、糖尿病や肥満は世界中のあらゆる世代で増加しており、日本を含め世界中でその対策を講じることが急務である。さらに、これからの高齢化社会においても、糖尿病や肥満の対策は心血管疾患だけでなくがん、心不全、認知症へ大きな影響を与えることから、ますます重要性が高まると考えられる。 本研究は、糖尿病・代謝性疾患や肥満の病態解明及び克服のための探索的研究である。既存の大規模データベースを利用し、心血管疾患だけでなく、がん、心不全、認知症などの増加傾向にある重要疾患に対する予後改善を目指し、研究を続けていく必要がある。現在までに重要な臨床的知見を順調に論文化し、毎年報告している。また、腸内細菌や終末糖化産物などの専門的生体試料や持続血糖モニターなどの専門的臨床情報を用い、糖尿病・代謝性疾患や肥満の病態を明らかにすることも目的の一つであり、さらに研究を進めていく予定である。
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