左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)の病態としてNO産生低下など血管内皮機能障害との関係が考えられていることから、我々はHFpEF患者に対し硝酸薬が有効かどうか検証した。その結果、HFpEF患者において硝酸薬の使用は逆に心血管イベントリスク増加と有意に関連していた(Tsujimoto et al. Mayo Clin Proc 2018)。また、2型糖尿病患者の冠動脈疾患の治療方針も重要な課題であるが、冠動脈疾患に対し、心筋梗塞の既往がない場合は冠動脈バイパス術の方が内科治療より主要冠動脈イベントのリスクが有意に低いこと、また、心筋梗塞の既往がある場合にはPCIは内科治療よりそのリスクが高いことを報告した(Tsujimoto et al. SciRep 2018)。さらに、2型糖尿病患者の冠動脈疾患において、PAI-1/tPA比が高い場合はPCI治療の方が内科治療より主要冠動脈イベントリスクが高いことを報告した(Tsujimoto et al. JAHA 2018)。2型糖尿病と冠動脈疾患を併存した非肥満患者に対してはインスリン感受性を高める治療がインスリンを追加する治療より有効であった(Tsujimoto et al. Int J Cardiol 2018)。また、非ステロイド性抗炎症薬を使用している心血管疾患既往の2型糖尿病患者にアスピリンの有効性は認めなかった(Tsujimoto et al. Diabetes Obes Metab 2019)。その他、サイアザイドが比較的血圧の低い2型糖尿病患者においては心血管リスクを高める可能性を報告している(Tsujimoto et al. Hypertension 2019)。終末糖化産物と糖尿病関連合併症との関係についても研究を開始し、調査を進めている。
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