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2018 年度 実施状況報告書

RAGEとマクロファージ極性変化を標的とした糖尿病性神経障害の新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K16220
研究機関弘前大学

研究代表者

遅野井 祥  弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (40816261)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード糖尿病性神経障害 / RAGE / マクロファージ
研究実績の概要

in vivoでは6週齢の野生型マウス(W)とRAGE欠損マウス(W)にストレプトゾトシンにて糖尿病(D)を誘発し8週後に解析を行った.WDはWに比して有意に神経伝導速度(NCV)が低下し糖尿病性神経障害(DPN)を発症していたが,RDではNCVがRと同等に維持されておりDPNの発症が抑制されていた.坐骨神経(SN)の病理学的解析ではWDで他群に比して有意に多くのiNOS陽性M1マクロファージ(Mφ)の浸潤を認めたが,RDではM1の浸潤は少なく,一方で他群と比して有意に多くのCD206陽性M2マクロファージの浸潤を認めた.また,SNのqPCRではWDでM1マーカーであるiNOS,RDでM2マーカーであるCD163のmRNAの発現が他群に比して有意に上昇していた.SNのウエスタンブロッティング(WB)ではインスリン感受性の指標としてヒトインスリン5単位20分の刺激に対するAKTのリン酸化を評価した.WDではWと比してAKTのリン酸化が低下していたが,RDではRと同等に維持されていた.
in vitroではシュワン細胞株IMS32とMφ株RAW264の共培養を行った.BSA添加(M0),AGE添加(M1),IL4添加(M2)により分極させたMφとIMS32を0.4μm孔の半透膜を介して共培養した(それぞれM0-SC,M1-SC,M2-SC).共培養後IMS32におけるヒトインスリン0.24単位10分の刺激に対するAKTのリン酸化をWBにて評価した.M1-SCではM0-SCと比してAKTのリン酸化が低下していたが,M2-SCではM0-SCと同等に維持されていた.
以上の研究成果からRAGEの有無によりSNにおけるMφ浸潤様式が変化することが見出され,M1浸潤に伴う炎症が神経のインスリン感受性の低下を介してDPNの発症に寄与している可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定している研究計画の遂行に向けてモデル動物の解析,共培養系の樹立が順調に進んでいる.

今後の研究の推進方策

糖尿病性神経障害(DPN)におけるM1マクロファージの浸潤がシュワン細胞(SC)および神経軸索(Ax)の機能に及ぼす変化について検討を深める.SCのインスリン感受性に影響するM1由来の因子を特定し,その分子機序を解明するために共培養後IMS32のDNAマイクロアレイ解析を行う.Axにおけるインスリン作用は軸索輸送(AT)の調節に重要であり,M1浸潤と炎症の惹起に伴うインスリン感受性の低下がATに影響する可能性がある.マウス由来脊髄後根神経節ニューロンを用いて高濃度糖負荷,インスリン刺激,炎症性刺激(M1との共培養を想定)等に対するATの変化を解析する.

DPNに対するMφの直接作用を裏付ける実験として坐骨神経(SN)におけるMφの除去が必要である.しかし,多くの研究で使用されているクロドロン酸ではSNのMφを除去することができなかった.これに関しては血液神経関門の移行性を原因として考えている.クロドロン酸に代わる方法として放射線照射によるMφの除去と野生型マウス-RAGE欠損マウス間の骨髄移植によるM1/M2極性の操作を検討している.

次年度使用額が生じた理由

12月に科研費の残額を超過した解析を行った.その際の支払いを他の研究費で支払ったため科研費に次年度使用額が生じた.翌年度以降に,研究成果公表に係る学会参加費等(国際学会への参加予定あり)に充てたい.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Deficit of Retrograde Axonal Transportation Was Mediated via Activation of Macrophage RAGE Signaling in Experimental Diabetic Polyneuropathy2019

    • 著者名/発表者名
      Sho Osonoi, Hiroki Mizukami, Saori Ogasawara, Kazunori Sango, Kazuhisa Takahashi, Yasuhiko Yamamoto, Hiroshi Yamamoto, Soroku Yagihashi
    • 学会等名
      American Diabetes Association 79th Scientific Sessions
    • 国際学会
  • [学会発表] 糖尿病性神経障害におけるM1マクロファージ浸潤は逆行性軸索輸送を減弱させる2019

    • 著者名/発表者名
      遲野井 祥,水上 浩哉,高橋 和久,小笠原 早織,三五 一憲,山本 靖彦,山本 博,八木橋 操六
    • 学会等名
      第62回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 演題名未定(糖尿病性神経障害における急性期の病態について)2019

    • 著者名/発表者名
      遲野井 祥,水上 浩哉,高橋 和久,小笠原 早織,三五 一憲,山本 靖彦,山本 博,八木橋 操六
    • 学会等名
      第33回日本糖尿病合併症学会
    • 招待講演
  • [学会発表] RAGEシグナルは糖尿病性神経障害における坐骨神経逆行性輸送に関与する2019

    • 著者名/発表者名
      遲野井 祥,水上 浩哉,高橋 和久,小笠原 早織,三五 一憲,山本 靖彦,山本 博,八木橋 操六
    • 学会等名
      第33回日本糖尿病・肥満動物学会年次学術集会
  • [学会発表] Suppression of Neuropathy Development in Diabetic Rage-Deficient Mice Is Associated with Absence of M1/M2 Macrophage Skewing in the Sciatic Nerve2018

    • 著者名/発表者名
      Sho Osonoi, Hiroki Mizukami, Saori Ogasawara, Kazunori Sango, Kazuhisa Takahashi, Yasuhiko Yamamoto, Hiroshi Yamamoto, Soroku Yagihashi
    • 学会等名
      American Diabetes Association 78th Scientific Sessions
    • 国際学会
  • [学会発表] 糖尿病性神経障害におけるマクロファージ浸潤とDRGニューロン萎縮の関係について2018

    • 著者名/発表者名
      遲野井 祥,水上 浩哉,高橋 和久,小笠原 早織,三五 一憲,山本 靖彦,山本 博,八木橋 操六
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 糖尿病性神経障害における浸潤マクロファージ極性とDRGニューロンの萎縮の関係について2018

    • 著者名/発表者名
      遲野井 祥,水上 浩哉,高橋 和久,小笠原 早織,三五 一憲,山本 靖彦,山本 博,八木橋 操六
    • 学会等名
      第32回日本糖尿病合併症学会

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公開日: 2019-12-27  

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