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2018 年度 実施状況報告書

ヘパトカインセレノプロテインPによる適応熱産生障害機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K16224
研究機関金沢大学

研究代表者

高山 浩昭  金沢大学, 医学系, 技術職員 (90725227)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードセレノプロテインP / 適応熱産生 / 褐色脂肪細胞 / ノルアドレナリン / 活性酸素
研究実績の概要

セレノプロテインP欠損マウスが低体温抵抗性を示す機序を明らかにするため種々の検討を行った。寒冷刺激下の全身セレノプロテインP欠損マウスの褐色脂肪組織では、酸化ストレスの指標であるMDA値が増加していた。また活性酸素によって活性化し熱産生関連遺伝子の発現を正に制御するp38MAPKのリン酸化が寒冷刺激下のセレノプロテインP欠損マウス褐色脂肪組織で亢進していた。また室温下または寒冷刺激下での全身セレノプロテインP欠損マウスの褐色脂肪組織では、活性型とされるスルフェニル化UCP1の蓄積が亢進していた。スルフェニル化とはシステイン残基の可逆的な酸化を指す。抗酸化剤NACの前投与によりこの蓄積が解除された。これらの結果は、セレノプロテインP欠損マウスの褐色脂肪組織では酸化ストレスが亢進し下流の分子を活性化していることを示唆する。
次に初代培養褐色脂肪細胞を用いてノルアドレナリンシグナリングと活性酸素の関係を検討した。初代培養褐色脂肪細胞へのノルアドレナリン処置により活性酸素産生とp38MAPKのリン酸化が有意に更新した。セレノプロテインPの前処置はこのノルアドレナリン誘導性の活性酸素産生を解除した。
次に、セレノプロテインP受容体候補として注目したLdl receptor related protein1 (Lrp1) の機能を検討するために、UCP1 creマウスとLrp1 floxマウスを交配し褐色脂肪細胞特異的Lrp1欠損マウスを作出した。これらのマウスに急性寒冷刺激を付加したが直腸温に差はなかった。
以上の結果は、ノルアドレナリンは褐色脂肪組織において一過的に活性酸素産生を亢進させることで熱産生を刺激すること、セレノプロテインPはこの活性酸素産生を消去することで熱産生を抑制することを示唆する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初代培養褐色脂肪細胞の樹立、蛍光分子を使用した初代培養褐色脂肪細胞での活性酸素レベルの測定などの実験手技の樹立に問題がなく、計画通りに実験を遂行できている。
当初の仮説である「ノルアドレナリンによる一過的な活性酸素刺激が熱産生を更新する」、「セレノプロテインPは有用な活性酸素を消去することでノルアドレナリン抵抗性を惹起する」を支持する結果が得られている。
仮説と異なり、褐色脂肪特異的Lrp1欠損マウスでは寒冷刺激下の直腸温に有意な変化はなかった。今後はより詳細に表現型を解析する予定である。

今後の研究の推進方策

初代培養褐色脂肪細胞を用いた実験では、ノルアドレナリン誘導性の活性酸素産生について、その責任細胞内器官の同定を目指す。また細胞温度プローブを用いてノルアドレナリンによる細胞温度上昇の検出と、セレノプロテインPによる作用の検討を試みる。
褐色脂肪特異的Lrp1欠損マウスでは寒冷刺激下の直腸温に有意な差はなかった。Lrp1はセレノプロテインPの単一の受容体ではなく、多くのリガンドと結合することが知られている。最近、Lrp1のリガンドの一つであるラクトフェリンが乳児期の熱産生に重要であることが報告されたことから、このようなセレノプロテインP以外のリガンドによる影響が大きい可能性がある。今後はマイクロサーミスタを使用し褐色脂肪組織の温度を直接測定することを試みる。

次年度使用額が生じた理由

実験を計画的に遂行した結果、27,504円の差額が発生した。差額は次年度に物品費として使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Anti-oxidative hepatokine selenoprotein P impairs brown fat thermogenesis by suppressing mitochondrial ROS2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Takayama, Swe Mar Oo, Hirofumi Misu, Kiyo-aki Ishii, Toshinari Takamura
    • 学会等名
      Keystone Symposia Obesity and Adipose Tissue Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] Hepatokine selenoprotein P suppresses brown adipocyte thermogenesis by impairing adrenaline signalling2018

    • 著者名/発表者名
      Swe Mar Oo、高山浩昭、御簾博文、石井清朗、篁 俊成
    • 学会等名
      第91回日本内分泌学会総会
  • [学会発表] 高山浩昭,Swe Mar Oo,御簾 博文,石井清朗,篁俊成2018

    • 著者名/発表者名
      ヘパトカインSelenoprotein Pによるカテコラミン抵抗性を介した褐色脂肪細胞熱産生障害
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 高山浩昭、SweMar Oo、御簾博文、斉藤昌之、松下真美、石井清朗、篁俊成2018

    • 著者名/発表者名
      抗酸化ヘパトカインセレノプロテインPによるカテコラミン抵抗性を介した褐色脂肪細胞熱産生障害
    • 学会等名
      第39回日本肥満学会総会

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公開日: 2021-12-27  

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